コメットさん☆の日記「星の絆2」
-
その2(前編)-

12/1 18:00
 星のトレインはハモニカ星国に入り、小ワープした。そのとたん、わたしは空気が
違うことに気づいた。

「あたたかい-大分元気が出てきたわ。」
「ひめさま、星のお城まで後4分です。みんなひめさまのご到着をこころまちにして
 おります。」
「車掌さん。もうすぐ着くのね」

小ワープがあけると星のお城のあるβ星が視界に入ってきた。わたしはなつかしさで
胸がいっぱいになった。
ここでわたしの住む、β星について紹介しちゃうと、β星はハモニカ星国の中心にある、
地球の太陽とほぼ同じ大きさと温度のハモニカ星の第二惑星で大きさ及び重さは地球の
0.96倍、よって重力もほぼ同じ。
一方、大気の温度はどの場所でも平均18度、四季に応じて0〜30度になるよう星力で
調節されており、もちろん雨の降り方等も全て制御されており、地球のような自然災害は
まず起こらない。ハモニカ星にはこのほかに3つの惑星があり、隣の第3惑星(γ星)には
星国唯一の「輝き回復所」(地球の刑務所に当たる)があり、「かんごく星」と呼ばれて
いる。
星のお城はβ星の赤道上の地上より約200kmの高さにあり、星力で地上とつながっている。
星国では当然の事ながら、移動したり、食べ物や建物等をつくったり、などあらゆることを
するのに「星力」が使われており、地球のように排気ガスをまき散らす車や爆音をあげて飛ぶ
飛行機等による公害やエネルギー問題はない。
「星力」の大もとのエネルギーはハモニカ星の隣の恒星のエネルギー星をはじめとする、
恒星たちから供給される。星国には地球のような「お金」というものはない。欲しいものは星力
あるいは他の人に頼むことによって手に入れることが出来る。つまり、星力さえ使えれば、生きて
いけるのであり、地球人のように生活のために働いてお金を得る必要はないのである。
これが地球の人とわたし達星使いとの最大の違いかもしれない。「星力」は「星の子」達の善意の
もとに(ただで)供給されているのであり、これがもし、地球のように
「あなたの今月の星力の使用量は356エトワールでした。21548ハモニカを来月末までに
ハモニカ銀行にお振込下さい。星力の使いすぎに注意しましょう。ハモニカ星力管理局」なんて
請求書が来たら、星力なんて使う気がしなくなってしまうー。

「ひめさま、もう着きましたよ。」
おっといけない。わたしはラバピョンと一緒に急いで星のトレインから降りた。すると突然、
「パ〜ン、パ〜ン」というクラッカーの音とともに、「ワー!」という大歓声に包まれた。
わたしはあっけにとられていたが、
「ひめさま御帰還おめでとうございます」
というヒゲノシタの声にようやく我に返って辺りを見回すと、まず、「ひめさまお帰りなさい」と
書かれた横断幕がかけられた星のお城の門が目に入った。反対側を見ると、数えきれない人々や
星人達が集まっていた。お城の中にも大勢の人がいるようだった。

「ヒゲノシタ!」
「みな、一目ひめさまのお顔を見たくて集まっておるのです。本来ならお城まで星のトレインに
 お乗り頂くのですが、ここからは王族専用の「星のゴンドラ」で移動して頂きます。こちらに
 どうぞ。これにお乗り下さい。」

わたしが言われるままに星形のふたのような物に乗ると、回りがガラスのようなものでおおわれ、
わたしはゆっくりと舞い上がっていった。たくさんの人が手を振っていた。どの顔も輝いている。
わたしは自然と手を振っていた。
「みんなーありがとう。」
わたしは星国に生まれて本当に良かったと思った。

「本当に久々に帰ってこれてよかったのピョン。」とラバピョンも嬉しそうに言った。
 やがてわたしはお城の中に入り、ゴンドラを降りた。周りにはなつかしい顔が並んでいた。

「おかえり、コメット」
「ただいま〜お父さま〜!」と言ってわたしは父の胸に飛び込んだ。後で聞いた所では、父はこの時
あまりの嬉しさに、もう死んでもいい、と一瞬思ってしまったそうだ。
今では少しわかる気もする。
「王様、王様!ー」というヒゲノシタの声にわたし達はやっと我に返った。「大変申し訳ありませんが、
 ひめさまに今後の事をお話ししなければなりませんのでー」
「お〜お、そうじゃった。たのむ」
「その前にこちらの方々をご紹介したいと思います。」
「コメット様。はじめまして。輝きチェックビトの長、マーズでございます。先日はこちらのヒデが
 大変お世話になりました。」
「いえ、こちらこそー。映像では会っているわね。よろしく。」
「お久しぶりです。ひめさま。お会い出来るのを楽しみにしておりました。」
「お元気ですか。」
「はい。これもひめさまのお蔭です。」
「ありがとう。ーク、クラリス!会いたかった!久しぶり!」

わたしは星国での一番の親友、バイオリン星国の王女クラリスの手をとった。

「コメット、私もよ。明日の裁判には私も行くわ。困ったことがあったら何でも言ってね。」
「ありがとう。」
「ひめさま。クラリス様がおっしゃられたように、ここにおられる方々は皆明日行われるラバボーの裁判に
 出席されることになっております。それではこの後の事を申し上げますと、19時より、大広間にてひめさまの
 ご帰還歓迎レセプションが開かれ、その中で記者会見が行われることとなっております。」
「ヒゲノシタ。コメットは長旅で少々疲れておるはず。記者会見はわしが対応するから、コメット。おまえは
 みなに顔を見せたら明日に備えてゆっくり休みなさい。ラバピョン、コメットに代わってみなの質問に答えて
 やってくれ。」
「わかったのピョン。」「承知しました。そのように手配させます。」
「お父様、ありがとう!」
「それから明朝9時より裁判を開始いたします。裁判について簡単にご説明致します。
 まず、私が裁判長、それからタンバリン星国とカスタネット星国から一人ずつ裁判官が来ます。この3人で
 ラバボーが有罪か無罪かを決めるのです。それから、この裁判には2名の輝き自然度チェックビトがつきます。
 1人はマーズ氏、もう1人はリゲル長官です。」
「どうして輝き自然度チェックビトが必要なの?」
「ひめさまはまだご存知ありませんでしたな。すみません。星国の裁判では裁きが正しく行われているか輝き自然度
 チェックビトがチェックすることになっております。証人や被告人がウソをついていたり、あるいは星力を使って
 不正を行おうとしても見破ることが出来るのです。ですからひめさまも質問には正直にお答えになりますよう、
 重ねてお願い申し上げます。なお、星力を使った不正を防ぐために、法廷内では輝き自然度チェックビト以外は
 原則として星力は使えない決まりとなっております。よってティンクルバトンの類いは法廷内に持ち込み禁止と
 なっておりますのでご注意を。」
「わかったわ。ヒゲノシタ」

「輝き自然度チェックビトは普通は一人ですが、今回はひめさまの番組作成のためと、
 より公正に裁判を進めるために、私も加わることとなったのです。少しはご安心頂けたでしょうか。」
「マーズさん、よろしくお願いしますね」
「それからまず、検察官が被告人のラバボーがどんな悪いことをしたのか、どうしてそう思うのかをお話しします。
 その時、ラバボーや証人であるひめさま等に色々質問をいたします。
 次に弁護人-これはムーク侍従長にお願いしてあります。今回はメテオ様とご一緒に明日来られることになって
 おります-がラバボーは検察官が言ったようなことはしていない、どうしてそう思うのかをひめさま達に質問したり
 しながらお話しします。
 そしてこれら両方の意見、および輝き自然度チェックビトの意見を聴いて私達が判決を下すのです。お分かり頂け
 ましたかな?」

「ええ。大体。あ、わたしからラバボーのために何か言うことは出来るの?」
「はい。裁判長の私が許可すればお出来になれます。ただし、ひめさまはラバボーを一番良くご存じのはずですから、
 ひめさまのご発言次第で、ラバボーの有罪、無罪がきまるやもしれません。ご発言の際はよく御考えになった方が
 よろしいかと思います。」
「ええ、そうするわ。」

「あの〜。裁判長。」
「何ですかな。クラリス様」
「私も弁護人になっていいですか。ムーク侍従長だけだとちょっと心配で」
「それはー」

「わしが許可する。」
「王様!し、しかし〜」
「ムーク侍従長が同意すれば問題なかろう。」
「わ、わかりました!すぐに確認をとってまいります。」
ヒゲノシタは足早に去っていった。

「ありがとう!お父様。クラリス。」
そうわたしが言うと、クラリスの犬型のお供のカールが突然出てきて「ひめさまお久しぶりです。」と言った。
「カール。久しぶり。元気そうね。」
「コメット。この裁判、勝つのは結構難しいと思うわよーあ、ヒゲノシタが戻ってきたわ」
「クラリス様。ムーク殿の同意がとれました。よってクラリス様はムーク侍従長の補佐としてラバボーの弁護を
 して頂くこととなりました。もう間もなくレセプションが始まりますので、みなさまどうぞこちらへ。」

わたし達は大広間へ向かった。-

-☆☆☆-

 その頃ラバボーは城の下層部にある牢屋の中で半べそをかいていたが、
「あ、これはひめさまの輝きだボー!ひめさまはやっぱり助けに来てくれたんだボー!」
と言って起き上がった。そこにバッタ人がやって来て、
「ヒゲノシタ侍従長からの伝言を伝えに来たのであった!。ひめさまは先程到着され、
 明日の裁判にご出席されるのであった!では」と言って帰っていった。

「あ〜もう帰っちゃうの〜。」
ひとり残されたラバボーは「ひめさま〜。」とつぶやいた。


 一方、藤吉家では丁度夕食の時間だった。

「やっぱりコメットさんがいないとちょっと寂しいわね。」と沙也加ママが言うと、
「ツヨシ君もさびしい」「ネネちゃんもさびしい」と2人が答えた。
「そうだね。今頃どうしてるかな〜。コメットさん。」ちょっと寂しそうに景太郎パパが言った。
「今日は久しぶりにあちらの家に帰っていると思うわ。裁判があるのは明日だと思うし」
「ネネちゃん、星国にいきたい。」「ツヨシ君もいきたい」
「でもすっごく遠いんだろ〜コメットさんが住んでいる国って」
「うん、でも星のトレインで1日かからないってツヨシ君きいた。」「ネネちゃんもきいた。」
「へえ〜。でも、コメットさんの住んでいる国って、どこにあるのかなー。ねえ。ママ。」
「『ハモニカ星国』なんて聞いたこともないわね。きっと最近出来た、小さな島国なのよ。」
「『星国』だから宇宙にあったりしてーなわけないよなー」
「パパ、ー。でも、きっと自然が豊かで、星が良く見えるのよ。」
「でもコメットさんが来てから不思議な事が良く起こるよな」
「そうね。ーあの子は私達にはないものを持っているわ。」そう言って、沙也加ママは窓の外の星を
 見ながらつぶやいた。

「早く帰って来てー。」

12/1 20:00
 レセプションを会場を早々に抜け出したわたしとクラリスはわたしの部屋でこれまでのお互いのことを
色々話した。わたしのいるハモニカ星国には140の小星国があり、小星国は更に100〜1000の星域から
成り、星域は100〜500の星団を持っており、星団は数千〜数万の恒星から構成されている。
クラリスはハモニカ星国の1/4を占める、最大の小星国のバイオリン星国の王女で、わたしとおない年だが、
5年前に両親を事故でなくしてからは摂政である叔父を助けるべく、女王としての勉強をしていた。
頭が良く、優しくて、強い意志を持った彼女にわたしはひかれ、よく相談にのってもらっていた。彼女も
わたしに何でも話してくれていた。ー

「クラリス。わたし、あなたにそっくりな顔をした人の出てくる映画を見たのよ。」
「知っているわ。あなたの番組の『動画ビト』の回で出て来た映画でしょ。ちょっとだけしか見てないけれど、
 確かに私によく似ていたわね。」
「ええ。年は違うこれど、名前は同じだし、御両親がいないことまでー。そうだ、この映画のビデオがあったハズよ。
 見たい?」
「もちろん」
「あなたがそう言うだろうと思って、さっきマーズさんに頼んでおいたわ。わたしもまだ見ていないパート1と
 一緒にもうすぐ宅急便で届けてくれるハズよ。」
「そうー。そろそろあしたの準備を始めなきゃ」
「準備って?」

「コメット。さっきも言いかけたけど、明日の裁判に勝つのは簡単じゃないと思うわ。あなた、もしかして
 ラバボーが前回捕まった時の裁判のビデオをまだ見てない?」
「ええ。でもラバボーからその時の話は大体聴いたわ。ひどい裁判だったそうね。」
「ええ。これを見ればわかると思うけれど、ムーク侍従長の話しは全然弁護になっていなかったわ。今回は
 もう少しちゃんとしてくれると思うけれど、あまり期待は出来ないわ。だから私が弁護人になろうと思ったの。」
とクラリスはビデオを取り出して言った。

「それに、あなたがここに来るまでにやっていた番組の緊急アンケートによると、ラバボーが有罪と思う人が
 半分以上の6割もいるのよ。このままではラバボーを助け出すことは出来ないと思うわ。」
「どうすればいいの?」
「まず、このビデオを見てちょうだい。」

わたし達は前回のラバボーの裁判の様子を見た。ラバボーがかわいそうだと思うと同時に、自分がその場に
いれなかったことを悔んだ。

「こんな裁判にはさせないわ。」
「エエ。でもコメット、相手はプロよ。子供の私達が勝つのは難しいわ。でも安心してちょうだい。
 わたしには心強い味方がいるの。ねえ、おじさま。」
「ク、クラリス様。その呼び方はちょっと〜。あ、コメット様。初めまして。私はカゲ人813号でございます。」
「よろしくね。」
「この事件についておじさまに色々調べてもらったの。後は向こうの出方次第だけど、何とかなると思うわ。
 ところでコメット。あなたはラバボーをどう思っているの?」
「確かに最近ラバピョンの所に行く回数が多いな〜とは思っているけれど、ラバボーはわたしの大切な友だち。
 それを『ひめさまほったらかし罪』なんかでつかまえちゃうなんてーひどい。今頃ラバボーどうしているかなー」
「大丈夫よ。それを素直に伝えれば、きっとラバボーを助け出せると思うわ。」
「そ、そーよね。あ、もうこんな時間。そろそろ寝よう。」
とわたしは言ったが、何となく「イヤな予感」がしていた。しかし、それはすぐにティンクルホンの呼び出し音に
かき消された。もうすぐビデオが宅急便で着くという知らせだった。

「クラリス。さっき言ったビデオがここに届くそうよ。見る?」
「ええ。早く見たいわ。ーあ、来たみたい」
それからわたし達はビデオを見ながら夜遅くまで語りあった。-


→その2(後編)へつづく