*
朝起きたらなぜかメテオさんの姿になっていたわたしは、
家で寝ているかもしれないわたしの体に会いに行く為に景太朗パパのお家で向かう事にした。
けどなんでだろ?昨日は星力なんてあまり使ってないし、むしろ寝ぼけて使ったなんて事は…ありえるかも。
…えーい!今はそんな事どうでもいい、とにかく急がなきゃ!
わたしは無我夢中で走った、そして景太朗パパのお家に入ろうとした途端、突然ムークさんが大声で叫んだ。
「ちょーーーっと待ったーーー!」
「うわわっ!」
わたしは大慌てで走っている足を止めた。
「いきなりどうしたの?ムークさん」
「コメット様、確かに貴方自身がコメット様です。
しかし姿はメテオ様、そのままの姿で家に入ると何言われるかわかりませんよ?」
「あ…そっか。今の姿だとみんな他人だって思っちゃうモンね。」
と、わたしは家のインターホンを押した。
すると景太朗パパが家から出てきた。
「おや?メテオさんじゃないか。」
「あの、パパ…いや、景太朗パパさん、今コメットってそちらにいます?」
「ん?コメットさん?コメットさんなら既にママのお手伝いに行ってるんじゃないかな?」
「えっ!寝込んでないんですか?」
「いや、別に寝込んでないよ。むしろ今日も元気にしてたけど。」
「そうですか…」
「んー、けど今日のコメットさん、いつもと様子が違ってたなぁ…。何かやけに笑顔が引きつってたし。
ま、そういう事なのでコメットさんに会いたいなら直接沙也加ママの所へ行くといいよ。えーと場所知ってたっけ?」
「あ、はいわかります。それでは失礼しました。」
わたしはパパにおじぎをした後、家を飛び出していった。
「むー、これは予想外…。まさかコメット様の体に誰かの意識が入り込んでるとは。」
「だとしたら、一体誰かな…?」
「ん、もしかしてさっき言ってた『笑顔が引きつってる』ってまさか…。」
「あっ、わたしわかっちゃった。」
わたしは手をぽんと叩いたあと、こう言った
「もしかして、その意識の人ってきっと…」
「メテオさんだ!」「メテオ様だ!」
声はほぼ同時だったらしく、わたしとムークさんの声が見事にハモった。
「あ、やっぱりムークさんもそう思った?」
「ええ、やっぱりそうとしか思えません。人前であまり笑顔を出すのが苦手な人ですから…。」
「つまり、わたしとメテオさん、意識が入れ替わっちゃったんだ。」
「そういう事になりますね。」
「けどなんでだろ?これが星力だとすると、やっぱりメテオさんのいたずらなのかな?
やっぱり、わたしが寝ぼけて星力を使ったのかなぁ…うーん、わかんない。」
「それよりもコメット様、そうとわかれば一刻も早くメテオ様がいる所へ行った方がいいんじゃないでしょうか?」
「え、どうして?」
「今は意識が入れ替わっていて、いきなりコメット様の姿になってしまったメテオ様はきっと機嫌が悪いでしょうから、
最悪の場合コメット様の姿のままでトラブルを起こしているかもしれません。」
「うーん、言われてみるとかなりあり得る話だね。急がなきゃ!」
と、わたしは急いで沙也加ママの所へ向かった。
…ちょっとさっきから誰かからの視線が気になってるけど、それはともかく、急がなきゃ。
「今日のメテオさん、いつになく笑顔がステキだ…。」
*
今日なぜかコメットの姿になってしまった私は、
ラバボーの言葉に惑わされて、仕方なく店で手伝いをしていた。
一刻も早く王子様を捜さないといけない私が、何故こんな事を…。
その気持ちは、そのまま言葉に出た。
「あ゛〜、なんで私がこんな事しなきゃいけないったらいけないのよ!」
「え?何か言った?」
「えっ、あっ、いえ、何も言ってませんよ沙也加ママ。」
「そういえばコメットさん、今日機嫌が悪くない?」
「え、なぜでしょう?私、別に機嫌わるくないですけど…。」
「だってコメットさん、今日はやけに機嫌悪そうな顔をしてるし、今だって笑顔が引きつってるわよ。」
「あっ、えっ…あっ、あはははは、そうですか?」
…こう機嫌の悪い日に笑顔はおろか、作り笑顔なんて作れやしない。心の中でそう思った。
「そうごまかしてもダメ、私にはわかるんだから。」
「そう…ですか?」
…この人、密かに私の心境を見抜いてるったら見抜いてるに違いないわ…とやっぱり心の中でそう思った。
「何が原因かは知らないけど、いつまでも機嫌を悪くしてちゃそのうち体も悪くなるわよ。
こういう時は一度外に出て歩き回って気分を晴らしてくるのが一番。
今日は手伝いはまた明日にしてあげるから、さぁ行ってきなさい。」
「はい、すいません…」
私は言われるがままに店を出ていった。別に外にでても機嫌は変わらないって言うのに…。
と、そこへコメットのティンクルスターからラバボーが出てきた。
「あーあ、お手伝い断られちゃったぼ〜。まー、メテオさんにはこういう仕事は向かないぼ〜。」
ラバボーにいやみったらしい声にムキになった私は、ラバボーの顔を伸ばしに伸ばしまくった
「あうあう〜痛いぼ〜!痛いぼ〜!」
「あー、こうなったのも全てアンタのせいよ!あー、むかつくったらむかつくわ!」
「なんでそうなるんだぼ〜!?ぼーは何もやってないぼ〜!」
「こうなったらどうでもいい!ストレス解消にアンタの顔をもっと伸ばしてやるったら伸ばしてやるわ!」
「あうー!やめてほしいぼ〜!」
と、その時…
「あっ、ラバボー!」
これは…私の声!と思った私は、顔を私の声が聞こえた方向に向いた。
すると、そこにいたのは明らかにもう一人の私だった…。
「あっ…」
「あなたは…誰?」
いきなりそう言われても…私は反撃に出た
「そんな事言うあなたは一体誰なのよ!!そうよ…私をこんなみにくいコメットの姿にしたのはアナタね!
絶対許せないったら許せないわ!」
「その聞き覚えのあるセリフ、明らかにメテオ様のものですな。」
さっきとは違うが明らかに聞き覚えのある声…それはムークだった。
「ムーク、なんでそんな所にいるのよ!さっさとそこから出てきなさいったら出てきなさいよ!」
「ひめさま、これには理由があって…。」
「そうなの、だから落ち着いてメテオさん。」
メテオさん…?何故今コメットの姿なのに私がメテオって事がわかるのよ?
「…なんで私の名前知ってるのよ?」
「やっぱりそうだ。わかるかな…、今の私はメテオさんの姿をしたコメットなの。」
「…えっ。」
私は愕然とした。あまりも衝撃的な事に私は気力が抜けた…。
なぜ、なぜ、コメットが私の姿になってるのよ…。
「…あのー、そろそろ引っ張るのやめて欲しいぼ〜…。」
*
わたしは、落ち込んでいるメテオさんに今までのことを話した。
やっぱりメテオさんも朝起きたら私の姿になっていたみたい。
私はこれはメテオさんの悪戯じゃないかと言ったら、メテオさんが猛反発に出た。
「私がぁ?なぜぇ?こんなぁ?事をぉ?…するのったらするのよ!
大体、私が自らの体を犠牲にしてまでこんな事はしないったらしないわよ!」
…ふーん、わかったわ。あなたは私が知らないうちに星力で私とあなたを入れ替えて、
そして知らないフリをして私に濡れ衣を着させるつもりね!」
「それは違います。けど…」
「けど?ほらやっぱりアナタが星力をかけたに違いないったら違いないわ!」
確かに私が寝ぼけて星力をかけたかもしれない。
しかし…わたしの姿で怒られるとどうも言葉を返す事ができない…。
そんな中、ムークさんが仲裁に出てくれた
「姫様、今はこんな事をしてても仕方ないです。どうしてこの様な事が起こったのか、原因を探らなくては。」
「そうね…少なくとも何もしないよりはマシだわ。コメット、あなたもついてきなさい!」
「あ、はい…。」
わたしは事に流されるがままに「はい」と言ってしまった。
「ところで、姫様。」
「なによ?」
「そろそろ、ラバボーを引っ張るのやめたらいかがでしょうか?」
「あ…。」
「……うぅ。」
…あっ、ラバボーの事。すっかり忘れてた。
*
私は、とりあえず移動せねばと思い、ムーク、ラバボー、そしていまいましいコメットと一緒に歩くことにした。
ただでさえ一緒にいる事が嫌なのに、しかも姿が入れ替わってる状態…最悪。
…2,30分くらい歩き回って、ある一つの疑問に気付いた。
「ねぇ、ムーク。」
「なんでしょう、姫様。」
「私達…何で歩き回ってるの?」
と言った途端全員立ち止まり、その後コメットは転び、ラバボーはボールとなって転び、ムークはそのまま墜落した。
これじゃまるでコントだ…。
「姫様…もしかして何も考えず歩いてらっしゃったのですか?」
「え?あなた達何か考えがあって歩き回ってたんじゃないの?」
「ぼーはメテオさんが何か考えがあったと思ってついていたんだぼ〜…。」
「ラバボーに同じく…。だって原因を探るって言ったの、メテオさんだし…。」
あー…ますますコントになって行く…。
よく考えてみると、確かに言い出したのはこの私。
「あー!なんでこうなってるのよ!」
「そう言われても…姫様。何か考えて無かったのですか?」
「そうよ!何も考えて無かったら無かったわよ!」
「これじゃあ原因がわからないぼ〜、ずっとこのまま入れ替わったままなんでぼーが嫌だぼー!」
「私的にはずっとコメット様とメテオ様が入れ替わったままでいいと思いますが。」
「それは嫌だぼー!こき使われるなんでごめんだぼー!」
「あーんーたーたーちーぃー…もう許せないたら許せないわよ!」
私はこの二匹を両手で押しつぶしにかかった。
「あー、ずっとこのままなんて嫌ったら嫌よ!このままコメットのままで大人へ、おばさんへなるのは嫌ったら嫌ー!」
「おばさん…?おばさま…?そうだ!」
私はコメットの声につい反応してしまった。どうやらコメットは何か考えついたらしい。
「ん?どうしたのよ?」
「おばさま…スピカおばさまよ!おばさまに聞いてみれば何かわかるかもしれない!」
「それはいい考えだぼ〜!」
と、私に押しつぶされてるラバボーが嬉しそうな声で言った。
「スピカおばさま…?ホントにそれが解決の糸口になるんでしょうねぇ?」
「なるかどうかは保証できないけど、スピカおばさまなら何か知ってるかもしれない。」
「はぁ?それじゃあ意味が無いわよ。」
「とにかく、今からスピカおばさまの所に行きましょ。手がかりがつかめるかもしれない!」
「そうだぼー!いくぼいくぼー!」
「何でそんな勝手に…。」
「姫様、元に戻れるチャンスかもしれません。とりあえずここはコメット様の言う事を聞いておいた方がよろしいかと。」
「…まぁ、ムークがそう言うなら。」
「じゃ、決まり!今からスピカおばさまの所へ向かうわよ。」
と、コメットはティンクルバトンを出し、星のトンネルを作りだした。
そして、コメットにつられるがままに、私も星のトンネルの中に入り、スピカおばさんの所へ向かった…。
*