コメットさん☆の日記「星力なんかいらない」



主な登場人物:
コメットさん:12才。ハモニカ星国の王女。「瞳に輝きを持つもの」とされる
タンバリン星国の王子を探しに地球にやってきた。バトンによって「星力」を使
う事の出来る「星使い」でもある。
メテオさん:12才。カスタネット星国の王女。コメットさんを追って同じくタンバリ
ン星国の王子を探しに地球にやってきた。「星使い」でもある。
ラバボー:コメットさんのお供&ペット
ムーク:メテオさんのお供
スピカおばさま:コメットさんの母の妹。日本に住んでいる。コメットさんの良き相談
相手でもある。

ケースケ:15才。コメットさんの大切な友達。世界一のライフセイバーとなる夢をか
なえるためにオーストラリアに向う。
景太郎パパ:コメットさんがお世話になっている藤吉家の主人



2001 10/25
 -わたしが道を歩いていると、ケースケが突然現れて言った。
「おまえは何者なんだ?」
「ケースケ!どうしてここに。」
「俺は昨日見たんだ。俺が前に見た『かわいい女の子』に変身して何んかに乗って空に
飛んでいくのを。いったい、どういう事なんだ?!」
困ったな、どうしよう
-と思ったら、目が覚めた。
今のは、夢!?
急いで貝殻に耳をあてる。
-今日は夢にあの嵐の時に見た「かわいい女の子」が出てきた。そう言えばあいつに似
ているような気がする。ひょっとして-
 わたしはこれ以上聴いていられなかった。涙があふれてきて、この時初めて
自分はどうして星国に生まれたんだろう。ケースケと同じ、地球の女の子なら良かったのに
と思った。
-「わたしはだれ?」
「どうして星国に生まれたの?」
「どうして地球に来たんだろう」-
「それはひめさまが姫様だからだボー。ひめさま、またお悩みモードかボー」
「ラバボー!、それじゃわからないわ。もっとちゃんと教えて」
「そんなこと言ってもボー、あ、ラバピョン、じゃなかった、スピカおばさんに聴けば
わかるかもしれないボー」
「そうだねB」
わたしはスピカおばさんに話しをした。おばさんは黙ってわたしの話しを聴いてくれた
が、最後にこう言った。
「いずれこういう時が来ると思っていたけれどーでもこの答えはコメット、あなた自身が見つけるしかないのよ。」
「おばさんなら教えてくれると思ったのにーもうイイです、」
そう言ってわたしは半分泣きながら夢中でそこを後にした。
自分の部屋に倒れ込んで、
「そうだ、星力なんてもういらない。わたしもおばさんのように星力なんて使わなければ変に思われないし、地球の人と
同じになれるかもしれない。おばさんはもう星力を使っていないから、わたしの気持ちが十分わからないのだわ」

とつぶやいた。
ふと、前を見ると、小さく光るメモリーボールが目に止まった。
「そうだわ、これをこわしてしまえば、星国での私の記憶は全てなくなるワ。地球の人に生まれ変われるかもしれない。」
わたしはメモリーボールを持ち上げようとした。
「ひめさま何てことするだボー、やめるだボー」
「ラバボー、あっちへ行ってて!」
ラバボーをはねのけ、メモリーボールを落とそうとした。
が、出来なかった、できなかった!何かがわたしを止めていた。
とその時、
「た、大変だ、ひめさま、ケースケが」
「えッ?」
と言ってメモリーボールを良く見ると、何とケースケの船が突然の嵐に襲われていた。船が木の葉のように揺れていた。
「何とかしなきゃ」と思ったが、星力を使わないことに決めたことを思い出した。
このままじゃケースケ達が危ない。どうしようー見ているしかないのー
「エエイ、やっぱり使うしかないわ」
と思ってバトンを出そうとしたが、出てこない!!星力が使えない!!
「あ〜ら、コメット、どうしたの。あなたが『星力なんてもういらない。』なんて言うから、ムークに頼んであなたが
星力を使えないようにしてあげてるんだけど」

「メ、メテオさん。どうしてそれをー」
「このわたくしがそんなこと知らないとでも思っているの、コメット、イイ、あなたはハモニカ星国の王女なのよ。
地球人みたいになれるワケないでしょ」

「そ、そんな〜。メテオさん、時間がないの。わたしを早く元に戻して。」
「いいわ。あなたがそんなに言うのなら。ムーク、もとに戻してあげなさい。」
「しかし、姫様。コメット様が星力を使えるようになるには最低30分はかかるかと思いますがー」
「だったら、早く!」
「は、ハイー。ーヒ、姫様、あ、あれは」
わたしがメモリーボールの方を見るとみたこともない巨大な波がケースケ達の船に覆いかぶさろうとしていた、
「ケースケ!!!ー」
その時、何かが変わった。

わたしはいつの間にかバトンを手にし、「エトワール!」
と叫んでいたー星力は使えないはずなのに
ふと気がつくと、嵐は止み、船は静かな波間にただよっていたー
「師匠。今の嵐は何?」
「ああ、多分ミクロバースト、てやつだと思う。フロリダ沖なんかで時々発生する突然
の嵐の小さいヤツだ。予測が難しいから、海の男達には恐れられているやつだ。ナンだ。
そんなことも知らなかったのか」
「まだまだ未熟ですから。」
「でもおかしいな。この辺りじゃめったにないハズなんだがーまあいいか。助かったん
だから」
なんて話している二人を見ながらわたしはようやく気付いた。そう、
わたしは、たとえ星力が使えなくったって、地球の人にはなれないし、地球の人とはちがう。

でも、わたしには私にしか出来ない力が「与えられており、」それを「正しく使うこと」
が求められている。確かにわたしは自分の生まれやもってうまれた力を選ぶことは出来ない。
だれがそうしたかは今はわからないけれどー

でもそれを大事にして、今の自分を精一杯輝かせて生きればいいんだ、ということに
ーということは、もしかしてわたしが地球に来たのは「ほんとうのじぶんを見つけるためー」なのかな。
ーおばさまごめんなさい。今度会ったら教えてくださいね。ー


ーー「あいつ、俺の言葉を最後まで聴いてなかったな。あの後『あいつは地球人ではないかもしれない。
でもたとえあいつがハモニカ星国の王女だったとしても、あいつはアイツなんだ。
俺はそんなアイツが好きだ』って書いたのにー」

「ケースケ、どうした?」
「し、師匠、何でもありません。」

ケースケは慌ててコメットさんが持っているのと同じ、否、逆向きに巻いている
白い貝殻を耳からはずして言った。

 

ー終ー