コメットさんの日記-最終章ーいのちの最後の輝き


その2の主な登場人物:
コメットさん:12才。ハモニカ星国の王女。「瞳に輝きを持つもの」とされる
タンバリン星国のプラネット王子を探しに地球にやってきた。ネメシスさん達と
一緒にカスタネット星国の病院星に向かう。
メテオさん:12才。カスタネット星国の王女。コメットさんを追って同じくタンバリ
ン星国の王子を探しに地球にやってきた。身寄りのないメネシスさんに目をとめ、良き
理解者となる。ネメシスさん達と一緒に病院星へ向かう。
ネメシスさん:65才。星国の人なのに星力を全く使うことが出来ないという、超特殊
な性質を持つ。このため両親の死後、カスタネット星国から地球にひとりやってきた。
ヤベツさん:12才。病院星の王族専用エリア内に入院中の少女
メテオママ:カスタネット星国の女王。
ラバボー:コメットさんのお供&ペット
ムーク:メテオさんのお供
エウロパ教授:120才。カスタネット星国最高の病院ビトで病院星代表。ヤベツさん、
ネメシスさんの主治医。

輝きの求道者:35才。この日記の作者。ネメシスさんのいた病院の臨床薬剤師。
ネメシスさん達と一緒に病院星へ向かう

その2
 1/11 19:30

「コメット。後5分でワープアウトよ。」
とメテオさんがわたしに言った。わたしはメテオさん、輝きの求道者さんと一緒にメテ
オさんのお母さん主催の夕食会に出ていた。星国の食べ物は3大星国間であまり差がな
く、地球の食べ物ともよく似ていた。そしてどれもがすごくおいしい!さすがカスタネッ
ト星国最高の料理ビト達が作っただけのことはあるな、と思う。
「お母様、病院星まであとどれ位?」
「そうね、後数分でワープアウトだから、あと10分くらいかしら。」と言ってメテ
オさんのお母さんは赤いワインのような飲み物を口にした。
 わたしはカスタネット星国には何度も行ったことがあるが、病院星に行くのは初めて
だった。病院星は各星国に一つづつあって、カスタネット星国の病院星はカスタネット
星系の第4惑星で直径は地球の0.85倍、表面の85%が海である。その隣にはカスタネッ

ト星国の王宮がある第3惑星のパレス星があって、表面の95%が海でおおわれている。
パレス星の直径は地球の1.01倍、公転周期は366日、自転周期は24時間1分と、海
の面積が広いほかは地球にとてもよく似ていた。
「本船は間もなくワープアウトし、1分後に病院星に向けて小ワープします。到着まで
後約7分です。」
と船内アナウンスがあった。
「さあ、皆さん、ブリッジに上がって。下船の準備を。」
「ハイ。お母様。ムーN。コメット。行くわよ。輝きの求道者さんも。」
「ハイ。姫様。」
「ラバボー。行くよ。」
「ウン、ウン、このデザートはホントにおいしいボー。ーえ、ひめさま、待ってだボー」

 わたし達はブリッジに通じるエレベーターに乗った。ドアが開くと目の前の窓にカス
タネット星国の緑色の渦巻きが大きく広がっていた。それからすぐに小ワープし、約3分後、
地球より少し小さい病院星の姿が見えてきた。ー


1/11 19:45
 病院星に着いたわたし達は100階建てのこの星最大の病院に向った。ネメシスさん
はすぐに100階の王族専用エリア内の個室に運ばれた。一方、わたし達はここの病院
ビトの長で、この星の代表のエウロパ教授の部屋に案内された。

「これは、これはメテオ様。お久しぶりです。ようこそ、お出で下さいました。」
「相変わらず元気そうね。紹介するわ。こちらが私の友達でハモニカ星国のコメット王女、
そしてこちらがネメシスさんが地球で入院していた病院の臨床薬剤師の輝きの求道

者さん。」
「初めまして。コメットです。わたし、カスタネット星国には行ったことがあるけれど、
ここに来るのは初めてです。」
「初めまして。エウロパです。コメット様のことはメテオ様から聞いておりました。」
「初めまして。輝きの求道者です。カスタネット星国、いやトライアングル星雲医学界
最高権威にお目にかかれて光栄です。」
「輝きの求道者さん、初めまして。病院ビトという立場から、薬剤師というお仕事につ
いて、あなたに是非一度お話しを伺いたいと思っていました。」

 星国では病気を治すのには薬ではなく、普通星力が使われる。まれに薬草が使われる
こともあるが、それは病院ビトが扱うため、星国には薬剤師という職業は存在しないの
だ。病院ビトが薬剤師を兼ねている、と言っていいだろう。

「ありがとうございます。がしかし、それは後でということにっして、まずはこれが
当病院でのネメシスさんのカルテ及び検査データーです。」

と言って輝きの求道者さんはエウロパ教授にCDを手渡した。
「どうもありがとうございます。早速治療の参考にさせて頂きます。それから、今後の
予定ですが、これから明日にかけて、様々な検査を行います。その結果を元に治療方針
を決めたいと思います。」
「エウロパ教授、ネメシスさんは治りますか。」
「検査結果を見ないと何とも言えませんが、ここには最高のスタッフがそろっています。
彼等の星力できっと治せると思いますよ。」
「よろしくお願いします。」
「お2人はネメシスさんの病室に行かれますか。輝きの求道者さんはここで私とお話し
がありますので。」
「ええ。もちろん」
「それでは君、お2人をネメシスさんの病室まで案内してくれ。」
「わかりました。どうぞこちらへ」
「それでは失礼するわ。」「失礼します。」
「またおいで下さい。」

部屋を出たわたし達は看護婦ビトの案内で、ネメシスさんの病室へ向かった。カスタネッ
ト星国の看護婦ビトはハモニカ星国と違い、地球の看護婦さんとよく似た服装をしてい
た。ただし、色は白ではなく、明るい緑だった。わたしはこの色もなかなかいいな、と
思った。
100階に通じるエレベーターに向かって歩きながら、わたしは看護婦ビトに聴いてみた。
「看護婦ビトさん、ちょっとお聞きしていいですか。ひとが亡くなる瞬間を見たことあ
りますか。
「私はこの病院に来て5年になりますが、もう何度も見ました。」
「死ぬってどういうことだと思いますか」
「難しい質問ですね。でも、私が見たほとんどの人はとても穏やかに死んでいきました。
不思議です。もっと苦しむものだと思っていたのにー。そしてみんな『いのちの最後
の輝き』を持っているんです。」
いのちの最後の輝きー
「言葉で説明するのはとても難しいのですが、ひとによって強弱はあるのですが、ひと
が亡くなる直前に見せる輝きのことです。私は一度だけ、ある人が亡くなった時、その
輝きが出ていくのを見たことがあります。」
「その輝きはどこへ行ったの?」
「わかりません。もしかしたら、他の人の所に行ったのかもしれませんがー」
「ありがとう。とてもいいおbしだったわ。お名前は。」
「カレンと申します。よろしくお願い致します。もうすぐエレベーターです。」
「こちらこそ。」
わたし達はエレベーターで100階に登った。エレベーターホールのすぐわきにはナー
スステーションがあり、その先にはたくさんの病室があった。カレンさんの話では
この病院には約1万人の患者が入院しているという。

「ここは王族専用のエリアで、病室は全て個室となっています。今この階にはネメシス
さんの他にはもう一人、ヤベツさんという少女がいるだけです。」
「ヤベツ?聞いたことのない名前だわ。どこの星国の王女かしら。まあ、カスタネット
星国には小星国が250もあるからさすがの私でも全部は覚えてないけどー。ムーク、
聞いたことある?」
「いいえ、ございません。もしや小星国の王女様ではないのでは〜」
「カレン。その子は何歳なの?」
「12才と聞いています。」
「私と同じじゃない。本人は何と言っているの。」
「それがー、あ、ここです。」そう言ってカレンさんはドアを指差した。
わたしがふとその部屋の隣を見ると、小さい明かりがついていて、誰かがいるようだっ
た。
「カレンさん、あれがヤベツさんの病室なの?」
「そうです。」
「後で行っていい?」
「今日はもうおやすみになっていると思いますので明日にされた方がよろしいかと思い
ます。」
「わかりました。」
「どうぞ、お入り下さい。まだ検査中ですが、大丈夫です。」とカレンさんがドアをあ
けてくれた。」
「失礼」「失礼します。」
わたし達が中に入ると、白い台のようなものに寝かされ、大勢の人に囲まれたネメシス
さんが見えた。からだのあちこちにセンサーのようなものがつけられており、2人の病
院ビトが手をかざしていた。

「あの病院ビトは何をしているの?」
「あの2人は診断ビトと言って、患者さんの身体の状態を調べることが特に優れている
病院ビトです。病院ビトにはこの他に病気を治すことが特に優れている治療ビトがいま
す。治療ビトは得意分野によって更に内科、外科、精神科の3つに大きく分かれます。
でも優れた病院ビトはこの4つが全てうまく出来るそうです。院長のエウロパ先生は診
断ビトとしても、治療ビトとしても最高の輝きを持っていると思います。」
「何か、わたし達にお手伝い出来ること、ありませんか」
それを聞いた診断ビトの一人がこちらに来て言った。
「コメット様。はじめまして。今、予備的な診断がほぼ終わりました。これから『星力
の感受性チェック』を行います。」
「星力の感受性チェックって?」
「星力で病気を治療する際、患者さんによって、また病気によって、最も効果のある星
力はそれぞれ異なります。場合によってはある人からの星力では全く効果がなく、
別の人からの星力では非常に良く効く、ということもございます。つまり、予備的診断
の結果、効果のありそうな星力を持つ何人かの治療ビトに、患者さんに星力をあててもらい、

その中から最も効果のある星力を持つ人を選び出すことなのです。」
「ということは私達も試していいってこと?」
「もちろんでございます。メテオ様達お二人は星国の王女として、ここの治療ビト以上
の星使いでいらっしゃいます。是非お願いいたします。」
「そうと決まれば、早速星力を集めに行くわよ。ムーク、いらっしゃい」
「はい〜」
「ラバボーも行くよ。」
「わかったボー」
「あ、メテオ様。」
「わかってるわよ。エレベーターで屋上に行けるんでしょ。」
わたし達は部屋から出ると、早速屋上へ向かい、そこから上空に飛び上がった。

「これで十分だと思うわ。コメット、お先に〜」
「メテオさんー。あ、こっちももういいと思うわ。ラバボー、戻るよ。」
「ハイ、ひめさま。これでネメシスさんが早く元気になればいいボー。」
「そうだね。」

星国では地球よりも早く、より多くの星力を集めることが出来る。わたし達はほぼ同時
に星力を集め始めたが、ここはカスタネット星国なのでメテオさんの方が少し早く星力
を集めることが出来たようだ。
病室に戻ったわたし達は早速集めた星力をネメシスさんに試してみた。
まずはメテオさんがバトンを胸の辺りに向けて星力を照射した。
「シュテルン!」
すると、「おお!」という診断ビトの声があがった。
「さすがはメテオ様。これまでで最も高い感受性です。」
「まあ、そうだと思ったわ。コメット、次はあなたの番よ。でも一つ言っとくけど、こ
こはカスタネット星国だし、ネメシスさんはカスタネット星国の人だから、普通に考え
ると、わたくしの星力のほうがあなたよりも感受性が高いはずだわ。でも、まあ、一応
やってみて。」
「それじゃ〜。ヌイビトさん、わたしを看護婦ビトにして」
とわたしは言ってヌイビトを呼び出し、カスタネット星国の看護婦ビトと同じ姿になっ
た。
「ひめさま。その手があったかボー」
「星の子達。わたしに力を下さい。みんなの輝きを一つの輝きにして。エトワール!」
と言ってバトンをネメシスさんに向けると、ピンク色の輝きが胸の辺りに注がれた。
「コメット様の星力もメテオ様に次いで高い感受性です。」
「やっぱり私の方が感受性が高かったようね。これで試験は終わりなの?」
「いえ、次は私がー」
「輝きの求道者さん!あ、星力を集めに行かれてたのね。」
「ああ、まずは愛力を試してみようと思ってね。星の子達。わたしに力を下さい。わた
しの愛力を星力に変えて。アガパオー!」
輝きの求道者さんのバトンからオレンジ色の光が放たれた。
「おお、これはメテオ様とほとんど同じ感受性!しかし、メテオさまにはわずかに及ば
ずー」
「ということはわたくしの星力は輝きの求道者さんより感受性が高いってこと?」
「その通りです。メテオ様。」
「エウロパ教授」
「それでは私も一つ試してみましょう。シュテルン!」エウロパ教授の手から緑色の光
が放たれた。
「さすがはエウロパ先生、とても高い感受性です。がしかしー」
「やはりメテオ様にはわずかに及ばず、ですかー」とエウロパ教授は星力の照射をやめ
て言った。
「すご〜い!メテオさん、カスタネット星国最高の病院ビトのエウロパ教授より感受性
が高いなんて」
「まあ〜。当然ですわ。わたくしのネメシスさんへの思いがそれだけ強いってことネ。
エウロパ教授、これで試験は終わりかしら?」

「はい。今日の検査はほぼ終わりました。ネメシスさんの病気はかなり重いことがわか
りましたので、これから一日中交替で星力による治療を行います。そこで申し訳ありま
せんが、メテオ様、コメット様、輝きの求道者さんの順で、お一人最大一時間づつ。ネ
メシスさんに星力をあてて頂けないでしょうか」
「もちろんよ。それでネメシスさんが治るのなら、一時間でも二時間でもやるわよ。
ねえ、コメット。」

わたしは黙ってうなずいた。
「星力による治療はかなり体力及び星力を消費しますので、時間はお一人一時間以内に
して下さい。決してご無理をされないように。ご負担を感じられたらすぐに交替して下
さい。」
「わかったわ。」
「エウロパ教授、私は一時間半はいけると思いますが。」
「輝きの求道者さん、ーそうですね。あなたなら大丈夫かもしれませんね。それでは最
大一時間半でお願いします。」
「わかりました。」
「では、メテオ様、よろしくお願いいたします。先程と同じように、胸の辺りに星力を
あて続けて下さい。一時間後に交替して頂きますが、必要ならそれまでにお知らせ下さ
い。集中力がそがれるといけませんから、私達は席をはずしますのでー」
「じゃあ、始めるわ。シュテルン!」
「メテオさん、がんばってね。」
「ええ。」

わたし達はエウロパ教授の案内で99階の王族専用のゲストルームに向かった。
「ここは王族方がこの病院に滞在される時に使われます。こちらがコメット様、その隣
が輝きの求道者さん、そしてあの一番奥の部屋がメテオ様のお部屋です。ー今は21時
すぎですので、明日は9時ごろからお3方に治療をして頂くことになるかと思います。
よろしくお願い致します。それから明日朝のお食事はゲストルーム内の食堂でとられま
すか?ルームサービスも可能ですが。」
「わたしは食堂に行くわ。」
「私も」
「かしこまりました。それでは失礼いたします。あ、22時5分前にはお迎えの者が参
ります。」
「自分で行けるからいいわ。」
「では何かあればこちらからご連絡します。では。」
「わかったわ。」
「じゃー僕もひとまずこれで」
「あ、待って、輝きの求道者さん。聞きたいことがあるの。」
「何かい?」
「生きるってどういうこと?死ぬってどういうこと?ってことなんですけど。」
「悪いけど、今、僕の口からそれを言うわけにはいかないんだ。」
「どうして?」
「これは君にとってとても大切なことだから、自分で答えを見つけて欲しいんだ。これ
も星の導きでね、今僕が言ってしまうと君が自分で見つけるのを邪魔してしまう可能性
があるんだ。だから多分もう少し後で君に話すことになると思う。でももちろん色んな
人の意見を聞くことは大切なことだと思う。でも最終的には自分で見つけて欲しいんだ。
いや君にはきっと出来ると信じている
「そうー」
「でもヒントくらいは話しておこう。ーその答えのカギはネメシスさんとヤベツさんが
持っていると思うよ。」
「ヤベツさんて、どんな人?どうして入院しているの?」
「明日会えばわかるよ。じゃーまた後でー」
「もう、輝きの求道者さんたらー」

わたしは部屋に入った。王族専用だけあって結構広かった。わたしはベットのはしに座っ
てもの思いにふけっているといつのまにか寝てしまった。ー

ーその頃メテオさんは何とか星力による照射を続けていた。
(星力を照射し続けるのがこんなに大変だとは思わなかったわ。エウロパ教授の言う通
り、星力による治療はかなり体力を使うわね。でもネメシスさん、苦しそう。それに比
べれば、これ位ー)
(メテオ様。本当にありがとうございます。わざわざここまで来て頂いた上にこのよう
なことまでー。メテオ様からの星力、身にしみます。でもご無理はなさらないで下さい
ね。)
(ネメシスさん!起きてらしたのね。私は大丈夫よ。今どんな感じ?苦しくない?)
(メテオ様の治療が始まってから、胸の苦しさが少しラクになったような気が致します。)
(そう、良かったわ。このわたくしがきっと治して差し上げますわ。ーねえ、ネメシス
さん、生きるってどういうこと?死ぬってどういうこと?)
(メテオ様。あなた様がそのようなことをお聞きになるとは思っておりませんでした。ー
生きるとはつらいことでございます。もちろんそれだけではございませんがー。私
のこれまでの人生はそうでした。カスタネット星国の王女でいらっしゃいますメテオ様
にはお分かり頂けないかと思いますが、私はこれまでたくさんの別れや肉体的、精神的
苦しみ、寂しさ、悲しみ、劣等感ーを経験してきました。もう死んでしまいたい、と思っ
たことも何度かございます。そしてどんなに現実が厳しくてもそれを受け入れて前に進
まなければなりません。)ー

「ひめさま。電話だボー」
わたしははっと目を覚ました。急いで内線電話をとる。
「コメットです。」
「コメット様。後5分で交替の時間となります。」
「わかりました。カレンさん。すぐ行きます。」
わたしは急いでネメシスさんの病室に行き、メテオさんと交替した。メテオさんはかな
り疲れたみたいで
「ああー疲れた。もう寝るわ。コメット、これは思ったより体力を使うわ。気をつけて
ね」と言った。
「メテオさん、大丈夫?」
「ええ。何とか一時間もったわ。一時はどうなるかと思ったけど、ネメシスさんのおかげよ。
じゃーね。」


わたしは星力をあてながら、ネメシスさんをじっと見た。まだ苦しそうだけど、さっき
よりは少し穏やかになったような気がした。そして星力でこころに聞いてみた。
(ネメシスさん、生きるってどんなこと?死ぬってどんなこと?)
(コメット様。メテオ様も先程同じことを聞かれてました。あ、これは誰にも言わない
という約束でしたね。今のは聞かなかったことにして下さい。)
(メテオさんも同じことを聞いていたなんてーおかげんはいかがですか)
(この治療が始まってから、胸の苦しさが少しラクになりました。
生きるとはつらいことでございます。もちろんそれだけではございませんがー。私のこ
れまでの人生はそうでした。私はこれまでたくさんの別れや肉体的、精神的苦しみ、寂
しさ、悲しみ、劣等感ーなどを経験してきました。もう死んでしまいたい、と思ったこ
とも何度かございます。一番つらかったのは両親が死んだ時でした。それまで両親
が支えてくれたお影で何とか星国で暮らしてこれましたが、他に身寄りのない私はたっ
た一人で地球に行くしか生きることは出来ませんでした。この時程自分が星力を使えな
いことを恨んだ事はありません。ほんとうに自分が惨めで、なさけなく思えました。当
時の私にとって両親の死は「絶望」、「不安」、「孤独」、「恐れ」以外の何物で
もありませんでした。
でもしかし、コメット様。それでも私はこうして生きていくことが出来た、否、生
かされているのでございます。こんな私に目を止め、支えて下さる方々によってーも
ちろん、こうして今、星力を注いでいらっしゃるコメット様もそのお一人です。私はメ
テオ様とお会いしてから、「私が星力を使えないのは、もしかしたら何か意味があ
るのかもしれない」と思うようになりました。どんな意味かはまだわかりませんがー)
(ありがとう。とても大事なことを聴いたと思うわ。おやすみなさい。)

わたしは星力をあて続けながら再びネメシスさんをじっと見た。まだ苦しそうだった。
時々咳きこんだりしていて、見ているこちらまでつらくなってきてしまった。
(どうすればいいんだろう)
と思った時、
(ネメシスさんと一緒にいてみてごらん。君には出来るハズだ。)
との声が聞こえた。
「輝きの求道者さん!」
とわたしは思わず言ってしまったが、もちろん、部屋の中にはネメシスさんの他には誰
もいなかった。
(そうだわ。ネメシスさんとただ一緒にいればいいんだわ。)
わたしは一旦目を閉じ、ネメシスさんの輝きを感じ、「一緒にいて」みた。
すると、自分が星力を出しているのではなく、星力がネメシスさんによって「引き出されている」

のを感じ、ラクになった。
(メテオさんの言っていた「ネメシスさんのおかげ」ってこれのことね)
「ラバボー。これなら一時間当て続けられそうよ。」
「ひめさま。スゴイボー。でもカレンさんの話ではエウロパ教授は2時間も当て続けら
れるそうだボー。さすがカスタネット星国最高の病院ビトだボー」
「そうね。」

23時ごろ、輝きの求道者さんが現れ、交替したが、わたしはまだ後30分は出来そう
に思えた。それから自分の部屋に戻ったが、やはりそれなりに疲れてはいたようで、す
ぐに寝てしまった。

 

ーその3に続くー