<その2での主な登場人物>
コメットさん:12才。ハモニカ星国の王女。「瞳に輝きを持つもの」とされる
タンバリン星国のプラネット王子を探しに地球にやってきた。「星力」を使う事
の出来る「星使い」でもある。バーバラさん、ムハンマドさん達の依頼で暫定行
政機構の会議を成功させるためにアフガニスタンに来た。
メテオさん:12才。カスタネット星国の王女。コメットさんを追ってアフガン
に来た。キュービトを使って会議を成功させようとする。
ラバボー:コメットさん☆のお供&ペット

バーバラ・カーライルさん:28才。NYタイムスの新聞記者
ソフィア・ムハンマドさん:30才。アフガニスタンの暫定行政機構教育相
マフード・ファヒム大佐:56才。暫定行政機構副議長兼国防相
ハミド・カイザル:暫定行政機構議長
ムシャラク・アブドラ少佐:52才。かつてタリバンの指揮官。現在は暫定行政機構運輸相






12/23 9:00(アフガン現地時間)(日本時間 12/23 13:30)

「コメット、起きて。もう9時よ。」
「え?もう9時?おはようございます。バーバラさん」
「おはよう、コメット。あまりよく眠れなかったみたいね」
「ええー。昨日のことが気になってー」
でも、それはあなたがするわけじゃないわ。あなたはあなたの出来ること
をすればいいんじゃない?」
「そうですね。ありがとう、バーバラさん。わたし、少し元気が出てきました。」
「そう来なくちゃ。さあ、準備はじめるよ」

それからわたし達は9時半に、後から来たメテオさんと一緒にバーバラさんのジープで
ムハンマドさんのいるビルに向った。明るい日ざしが差しており、道路には空爆によると
見られるくぼみが所々に開いていた。
「あなた達はカイザル議長に会うのは初めてでしょ、だから議長の所にはムハンマドさんと
一緒に行くことになってるの。10時からカイザル議長にインタビューして、40分後に
近くの国防省でマフード大佐にインタビューすることになっているの。」
「わかったわ。バーバラさん、こっちも準備OKよ」
とメテオさん。
「それからコメット。カイザル議長はアメリカに住んだこともあって英語は上手いから、通訳は
いらないと思うわ。でも、マフード大佐はあまり得意ではないから、その時はよろしくね。」
「わかりました。」
「ここよ。」

わたし達はジープを降りて内務省の建物に入っていった。ここは合同庁舎となっていて、
10階建ての大きなビルだったが、壁の所々には銃弾の跡があった。すると、
「コメット!久しぶり!会いたかったわ。」の声とともに運転手を従えたムハンマドさんが
駆け寄って来た。
「ムハンマドさん、お早うございます。どうしてわたし達が来るのがわかったんですか。」
「星の導きよ。窓からあなた達のジープが来るのが見えたものだから。そちらはメテオさん、
でしたね。」
「はい。2人の友達のメテオです。カメラマンとして同席することになっています。」
「そうー。それじゃそろそろ私の車で行きましょ。議長のいる官邸はすぐだけど。」
わたし達は日本製の公用車に乗り換え、官邸に向かった。
「え?あの2人を本当に和解させられるの?バーバラさん。」
「ええ。このメテオさんの考えた方法なら、きっとできると思うわ。
詳しくはまだ話せないけれど。」
「そう、頼むわね。私もあさっての会議の成功を心から願っているの。」
「まかせて下さい!私の作った完璧な計画通りにいけば、きっとうまくいくはずです。」
「頼もしいわね。ーどうかしたの?コメット。少し元気がないみたいだけど。」
「いえ。ーちょっと気になることがあるだけです。」
「もう、着いたわ。みんな降りて。」

わたし達はムハンマドさんの案内で、2階建ての官邸の中に入っていった。この官邸は
旧王宮の一角にあるが、壁には所々亀裂やくぼみがあり、かつてこの中であった大きな
爆発による損傷が完全には修復されていないようだった。

「この右手が議長の執務室、左手の部屋が明後日会議が行われる大会議室よ。議長は今
その奥の応接室にいるわ。ここよ。」

と言ってムハンマドさんはドアをノックした。
「教育相のムハンマドです。バーバラ記者達を連れてきました。」
するとドアが開いて秘書官が顔を出し、
「議長がお待ちです。どうぞ」と言った。
わたし達は部屋の奥に入っていった。入れ代わりに、SPと思われる2人がドアの外に
向かっていった。戸口に立つのだろう。部屋の中にはテレビで見たよりやや細めに
見える男性がいた。
「お早うございます。カイザル議長。こちらがインタビューアーのバーバラ・カーライルさん」
「お久しぶりです。カイザル議長。前に1度、お会いしてますね。」
「ああ、よく覚えているよ。元気そうだね。」
「それから、こちらがNYタイムス日本支社のコメットさん」
「初めまして。カイザル議長。コメットです。よろしくお願いします。」
「君の事は教育相からよく聞いているよ。思った以上にかわいい顔をしているね。」
「そ、そうですか〜」
わたしはちょっと恥ずかしそうに微笑んだ。
「そして、同じく日本支社のメテオさん。急きょカメラマンとして同席してもらうこと
になりました。」
「初めまして、メテオです。カイザル議長にお目にかかれて光栄です。私もコメットと
一緒に前に一度ここに来たことがありました。よろしくお願いします。」

「君の事も教育相から少し聞いているよ。思った通りだ。若くて美しくて、行動力があっ
てー君たちが世界中から輝きを集めてくれたんだってーここまで来れたのも、君たちの
おかげかもしれない。」
「いえ、そんなー私はほんの少しお手伝いしただけですわ〜。」
「それでは私はこれで、30分後に迎えにくるわね。」
「了解」
「ご苦労だった。ムハンマド教育相」
と議長が言うと、ムハンマドさんは部屋を後にした。
「それでは議長、早速インタビューに入りたいと思います。コメット、テープの準備して。」
「ハイ!」
「カメラの方はOKよ。」
「それではまず、ハミド・カイザ暫定政権議長に伺います。マフード副議長兼国防相の
グループとの意見の対立から、あさって行われる予定の会議の開催が危ぶまれている
そうですが、本当ですか」

「残念ながらその通りだ。しかしまだ延期が決まったわけではない。」
「マフード副議長達との最大の対立点はどこですか。」
「治安を守るための方法だ。我々はやはり外国の手をある程度借りなければ無理だと思
うのだが、彼らは自分達で何とか出来る、と言って聞かないんだ。気持ちはわからない
でもないがー警察官の数も不足している。残念ながら、現段階では、我々だけではこの
官邸の警備すら、十分とは言えないんだ。今は海兵隊もいるから問題はないと思うがー」
「どうしてこうなってしまったと思われますか。少し前までは、いい雰囲気だったと聞いていますが。」
「理想と現実の違いだよ。彼等は最大勢力だ。自分達の思うままに暫定行政機構を動か
せると思い込んでいる。でも議長は私だ。彼等の好きにはさせない。」
「それは、譲歩しない、という意味ですか。」
「いや、そういうわけではない。が、しかし、少なくとも彼らが譲歩する姿勢を見せない限り、
こちらから一方的に折れるつもりはない!」
と議長は少し強い口調で答えた。これを見てバーバラさんがメテオさんに目で合図した。
メテオさんはカメラを構えて何枚か写真を撮った。
それからバーバラさんの方を見た。
この間、10秒となかった。

「ん?今何か言ったかね。」
「いえ。それでは質問を続けます。では、どうすれば良いと思われますか。」
「やはり。彼らが譲歩する姿勢を見せるよう、説得を続けるしかないと思う。彼らは数
に頼っているのではないか。もっと我々の意見に耳を傾けるべきだと思う。」
「わかりました。それでは次にー」
バーバラさんの質問は更に続き、あっと言う間に約束の30分が過ぎてしまった。
「失礼します。ムハンマド教育相が来られました。」
「おお、もうそんな時間か。」
「それではこれでインタビューを終わります。カイザル議長、ありがとうございました。
会議の成功を祈っています。」

「君達もご苦労様。何とか努力するよ。」
「議長、会議には是非出席してくださいね。」とわたしが言うと
「もちろんだ。我々は必ず出席する。向こうはどうかわからんがな。」と議長は答えた。
「また是非お会いしたいですわ。議長」とメテオさんが嬉しそうに言うと、
「ああ、私もだ。あさっての会議には君達も是非来てくれ」と上機嫌で議長が言った。
「ええ」

「話は終わったようね。」
「ムハンマドさん」
「議長、これからバーバラさん達をマフード副議長の所まで案内します。」
「わかっている。後で私の所に来てくれ」
「はい。では失礼します。」
わたし達はムハンマドさんの後に続いて部屋を出た。
「どうだった?」とムハンマドさんが聞いてきた。
「まずはうまくいったわ。あとはマフード大佐から話しを聞くだけだわ。」
「そうー。」

「マフード副議長はあそこに見える国防省の中にいるわ、すぐ近くだから歩いて行きま
しょう」


わたし達は5階建てのビルの中に入った。
「彼の部屋は5階よ。ーここはまだ時々停電することがあるの。このエレベーターもよ
く止まるのよ。」
「そうなんですか。あ、ついたみたいです。」
「副議長の部屋はあそこよ。じゃ、私は議長の所に戻らなくてはなあらないから、これでー」
「あ、ムハンマドさん、もうー」
「後で迎えに行くからー」

「やっぱりまだ仲直り出来ていないようね。」
ムハンマドさんの後ろ姿を見ながらバーバラさんは言った。
「そうみたいね。でも、さっきはうまくいったわ。バーバラさんのおかげで議長に
気づかれそうになったけど」
「ごめんなさい。いきなりあなたの声が心の中に聞こえたものだからー思わず声が出ちゃってー」
「もう、いいのよ。次はもっとうまくいくはずだわ。」
「ええ。さ、行きましょ。」
わたし達は部屋の中に入っていった。マフード大佐はわたしを覚えてくれていた。
「マフード大佐、お久しぶりです。コメットです。」
「やあ、君はあの時のー。この前は失礼なことを言ってすまなかった。君達のおかげで私はこの国の輝きに
気づくことが出来たんだ。感謝しているよ。」
「マフード大佐ー」
「やはり君は笑顔が一番似合うようだね。でも、今は大佐ではなく副議長と呼んで欲しい。
軍人としての肩書きはまだあるが、平和的なこの新しい肩書きの方がいいと思うんでね。」
「そうですよね。マフード副議長。初めまして。コメットの同僚のメテオです。お会い
出来て光栄ですわ。」
「君がメテオ君か。うわさには聞いていたよ。行動力があって頭がきれるそうじゃないか。」
「い、いえ、それほどでもー」

「それではインタビューを始めます。コメット。通訳をお願い。」
「準備OKです」
「こちらもよ」

「マフード副議長。カイザル議長との最大の対立点はどこですか?」

「我々はこの国をアフガン人の手で復興させたいと考えている。そりゃそうだろう?ここは我々の国
なんだからー。ところが彼等は何かというと外国人の手を借りたがる。その方が手っとり早いかもしれない。
でも、それではいつまでたっても我々は自分達の力で歩むことは出来ないんだ。まあ我々の力だけでは、
どうしても難しいものはあるだろうが、安易に外国に頼っていてはいけないと思う。」

「カイザル議長は現状では治安の維持は外国の手を借りない限り不可能だ、と言われてましたがー」

「それは向こうの考えだ。タリバンの元兵士達はどんどん村や都市に戻ってきている。
少し時間がかかるが、彼等を教育し、我々の兵士と合わせれば我々だけで何とか出来ると思う」

「では、どうすれば良いと思われますか。」

「やはり、彼等がもっと我々の言うことに耳を傾け、お互いがもっとフランクに話し会うべきだと思う。」

「カイザル議長はあなた方が譲歩する姿勢を見せない限り、こちらから一方的に譲歩はしない、
と言われましたがー」

「我々は譲歩しない、とは言っていない。しかし、今のままではそれは出来ない。確かに彼は議長だ。
しかし、暫定行政機構の中で一番多いのは我々だし、このカヴールを解放したのも我々だ。」

こうマフード副議長が話した後、メテオさんがカメラを構え、カイザル議長の時と同じように
何枚か写真をとった。その後、わたし達に目で成功を伝えてくれた。副議長は全く気づく様子はなかった。

「では、次の質問に移ります。ー」
バーバラさんの質問は更に続いた。聞いているうちに、わたしは2人の考えがそれほど違っていない
のではないかと思い始めた。でも、なぜその違いを認め、相手の話を聞こうとしないのだろうー
わたしは最後に思いきって聞いてみた。

「もう時間だわ。コメット、これでインタビューを終わりにするわ。」
「あ、最後にわたしから質問があります。」
「何だね。」
「わたし、副議長と議長のお話を聞いていて、お2人の考えがそんなに違っていないのではないかと
思うのですが、どうして相手の輝きの違いを認め、相手の話を聞こうとしないのでしょうか」
「それは難しい質問だね。お互いに相手を十分信頼していないからかもしれないな。
まあ、これまで長年対立する考えをもっていたグループどうしだから、無理もないとは思うがね。」
「あさっての会議には出席されますか。」
「そうしたいが、保証は出来ない。向こうの姿勢次第だと思う」
「マフード副議長ー」

「コメットー気持ちはわかるけど、私達からは今はこれ以上は言えないと思うわ。
マフード副議長、ありがとうございました。以上でインタビューを終わります。」


「失礼します。ムハンマド教育相が来られました」

「少し待って下さるようお伝え下さい。すぐ行きますから」

「わかりました。」

「それでは失礼します。」コメット、行くわよ。
「はいー」
わたし達は部屋の外に出た。早速ムハンマドさんが
「どうだった?」がちょっと心配そうに聞いてきた。
「バッチリよ。まだ全部終わってないけど、これで会議の成功は間違いないと思うわ。」
「よかった。私はこれから内務省へあなた達を送って行こうと思うけど、他に話を聞く
予定はある?」
「まだしなければならないことがあるから、一旦ホテルに戻るわ。」
「わかったわ。」

わたし達はムハンマドさんと一緒に内務省に戻り、再びジープに乗ってホテルを目指した。
「さあ、いよいよこれからよ。キュービト、よくやったわ
そう言ってメテオさんは早速リモコンを取り出し、イヤホンを耳にあて、操作を始めた。
まずはマフード副議長の方をこうして、次にカイザル議長の方をこれ位にしてー
ふん、ふん
どうやら副議長の考えが変わってきたようね。」
メテオさん、副議長の声が聞こえるの?
「ええ。もちろん。あの矢からの信号で2人の居場所もわかるのよ。こうすれば
カイザル議長の声も聞けるわ。議長の方も考えが変わってきたみたいだわ」
「着いたわよ。」

わたし達は部屋に着くと、メテオさんの様子を見守った。

マフード副議長がカイザル議長の所に向ったわ。それじゃレベルをこれ位
にしてー」
メテオさん、ほんと?」
「何ですって?」
テープの編集をしていたバーバラさんが言った
「マフード副議長がカイザル議長の所に向ったの。きっと仲直りするんだと思うわ」
「本当?」
「ええ。」
それから10分もたたないうちに、
マフード副議長がカイザル議長と話し始めたわ。なになに、『自分が悪かっ
た。会議には必ず出席する』ですって!それから『こちらこそ、君のことを少し
誤解していたようだ、我々ももちろん出席するよ。これからはもっとフランクに
話し合おう」ですって!!ついにヤッタワ。これで会議は成功まちがいなしよ!!
どう?コメット!わたくしのこの完璧な計画は。オーホホホ」

とのメテオさんの勝ち誇った声が聞こえた。

「メテオさん、すご〜い。ビックリしちゃった。」
「ねえ、もしかしてー」
「ええ。たった今、2人は仲直りして、明後日の会議に出席することを約束したわ。」
「本当に?やったわね。でも後で2人に会って確かめる必要があると思うけれどー。」
「その必要もたぶんないわ。今議長がムハンマドさんにこのことを電話で伝えているも
の。じきムハンマドさんからの連絡がここにも入ると思うわ」

それから5分とたたないうちにバーバラさんの携帯が鳴った。
「バーバラです。ムハンマドさん、え、本当に!2人は和解したんですね。良かった。
すぐにそちらに行きます!」
「ホ〜ラ私の言った通りでしょ?。もう大丈夫だと思うから、この自動モードにしとく
わ。コメット、悪いけど今回は完全にわたくしの勝ちね。
「メテオさん、ありがとう。正直言ってこんなにうまくいくなんて思わなかったわ。
疑ったりしてごめんね。」
まあ、いいってことよ。ーバーバラさん、2人に会いに行きましょ」

わたし達は再び官邸に向い、カイザル議長達と会った。確かに2人は仲直りしたようだった。
そしてわたし達を昼食に招待してくれた。日本のものとは違う、でもおいしい料理を食べながら、
わたしはみんなと一緒に楽しく語り合った。メテオさんの顔はいつになく輝いていた。でもわたしは、
「何か不自然なもの」を感じていた。
そしてわたし達が官邸から出た時、入れ違いに駆け込んできた一人の男性とぶつかりそうになった。
「あ、君は、あの時の」
「ムシャラク少佐!コメットです。こんなに急いでどうしたんですか」
「もう少佐じゃないよ。今は暫定行政機構の運輸相だ。あの2人が和解したと聞いて、
確かめに行く所だ。」
「ご安心下さい。今私達が確かめたわ。あ、初めまして、メテオです。」
「どうしてそれをーとにかく私は議長に会いにいくんで、じゃあー」
「ムシャラク少佐ー行っちゃった」

「さあ、行きましょ。あたな達、これからどうする?会議まではまだ時間があるけど」
「私は一旦日本に戻るわ。明日はクリスマスイブよ。イマシュンと食事をする約束なのよ。
コメットも一緒に戻るわよね
「わたしはもう少しいたいと思うけどーあの2人の様子も気になるしー」
「大丈夫よ。コメット。
今リモコンは自動モードになってるから、バーバラさんに預けるわ。
バーバラさん、何かあったらすぐに連絡下さいね。連絡先はこれよ。1時間以内に戻れると思うわ。」
「わかったわ。」
「そっか。じゃーわたしも戻ろうかな。パパやママも心配してると思うし」
「2人ともどうもありがとう。後は私にまかせて。良いクリスマスを」
「あら、あれは昨日の少年だわ。とめて」
ホテルの近くの路地裏にしゃがみ込んでいるハリー君の姿を見つけてわたしは言った。
「みんなは先に行ってて。後から行くわ。」
「了解。」
わたしはジープから降りると、ハリー君に近付き、
「こんにちは。ハリー君。はじめまして。コメットです。」
と言った。13,4才位の少年は驚いて
「どうしてぼくの名前を?」と聞いてきた。
「実は昨日、ホテルの食堂前であなたがパダルさんと話しているところを見たのよ。
どうしたの?元気がないみたいだけど。仕事は見つかったの?」

「それがーパダルさんは昨日のことを全然覚えていなくて、支配人にも話してくれてい
なかったんだ。もう一度頼んだけれど、昨日とは態度が違ってー『タダ食いするような
やつに仕事はさせられない』と言われてー逃げてきたんだ。ここ何日も満足に食べてい
ないからお腹がすいてー」
「はい、ハリー君。元気出して。わたし日本から来たの。これは日本のメロンパンといって、
おいしいのよ。食べたら、もう一度頼んでみよ」

「ありがとう。コメットさん」

わたし達は再びホテルに向い、バーバラさんと会った。メテオさんはなぜか既に戻った後だった。
バーバラさんに事情を話すと、
「そう。こっちの方は今の所大丈夫よ。ーこれで何とかなると思うわ。もしだめだったら私に言ってね。」
とお金を渡してくれた。
「どうもありがとう。バーバラさん。働いて必ず返します。」
「いつでもいいのよ。当分ここにいるつもりだから。」

わたし達は下に降り、もう一度パダルさんに会いに行った。パダルさんは最初は浮かな
い顔をしていたが、わたしが話しているうちに、そんなに熱心に言うならと、支配人に
話すことを約束してくれた。更に昨日払わなかった分と言って借りたお金を差し出すと、
正式に採用されるまで見習いとして働くことを許してくれた。
「ありがとう。コメットさん。本当にありがとう」
「ううん、こちらこそ。輝きをありがとう。わたしが元気になれたのも、ハリー君のおかげだよ。
じゃーまたね、あさってまでには戻ってくるわ。あ、せっかくだからお礼にわたしの本当の姿を
見せてあげる。ラバボー、いくよ

とわたしは言って変身し、星のトンネルの入り口を開いてラバボーと一緒に中に入った。
ハリー君は驚きのあまりしばらく座り込んでいたが、ようやく我に返り、
「て、天使だー」とつぶやいた。

再び木のロケットの所に出たわたし達は、星国に連絡して、帰りのために星のトレイン
を呼んでもらうようたのみ、次に家に連絡して戻ることを伝えた後、日本に向った。
「ラバボー、メテオさんの方法、もしかしたら失敗するかもしれないわ。」
「その時はひめさまの出番だボー。それよりあしたはクリスマスイブだボー。楽しみだボー。」
「そうね。さ、急ご。みんな待ってるよ。」

ロケットは白く光り輝く山々を超えて進んでいった

→その3へ続く