コメットさんの日記-心の闇3「アフガンの輝き2」

 

<主な登場人物>

コメットさん:12才。ハモニカ星国の王女。

「瞳に輝きを持つもの」とされるタンバリン星国の王子を探しに

地球にやってきた。「星力」を使う事の出来る「星使い」でもある。

かつてアフガニスタンに行き、バーバラさん、ムハンマドさん達と出会う。

メテオさん:12才。カスタネット星国の王女。

コメットさんを追って同じくタンバリン星国の王子を探しに地球にやってきた。

「星使い」でもある。

ラバボー:コメットさん☆のお供&ペット

ムーク:メテオさんのお供

 

バーバラ・カーライルさん:28才。NYタイムスの新聞記者

ソフBア・ムハンマドさん:30才。

かつてはマジャリシャリフ近郊の村の女性達のリーダー。

今はアフガニスタンの暫定行政機構教育相

マフード・ファヒム大佐:56才。かつて北部同盟の司令官。

現在は暫定行政機構副議長兼国防相

ムシャラク・アブドラ少佐:52才。かつてタリバンの指揮官。

現在は暫定行政機構運輸相

 

ハミド・カイザル:暫定行政機構議長

 

ウサマ・ヒン・ラディン:45才。テロ組織アルカロイドの指導者。

米国テロの首謀者とされる。家族構成、現在の居所など不明な点が多い。

数十人の兄弟がいるらしい。

 

オマール師:タリバンの最高指導者。現在の居所は不明。

 

景太郎パパ:コメットさん☆がお世話になっている藤吉家の主人

佐也加ママ:景太郎パパの妻であり、ツヨシくんとネネちゃんのお母さん。

剛(ツヨシ)くん:4才。景太郎パパ達のふたごの兄

寧々(ネネ)ちゃん:4才。同じくふたごの妹

三島圭佑(ケースケ):15才。コメットさん☆の大切な友達。世界一のライフセイバー

となる夢をかなえるためにオーストラリアに向かう。

 

 

 

プロローグ

12/22 19:00

 

 わたしがテレビを見ていると、アフガニスタンの暫定行政機構が今日発足した、と

ニュースで報じられていた。議長のハミド・カイザル氏以下30人の閣僚の中の3人の

女性のうちの教育相の名前を聞いてわたしは驚いた。

「ムハンマドさん!」その時、ティンクルホンが鳴った。

「もしもし、コメットです。あ、バーバラさん、久しぶり!とうとう暫定行政機構が

出来ましたね。」

「エエ。でも、実はそのことであなたの助けを借りたくて電話したのよー」

とバーバラさんは話し始めた。ー

 わたしは約1ケ月半前、アフガニスタンに行き、そこでバーバラさんとムハンマド

さんに出会い、アフガニスタンで行われていた戦争をやめさせるために、世界中、

更にトライアングル星雲中の「輝き」を集めてアフガン全土を雪で覆うという、

「暖かい雪作戦」を実行した。作戦は見事成功し、アフガニスタンは全土を覆った雪で

光り輝き、戦闘も中止されたが、やがて雪が解けると、再び戦争が始まり、多くの人の

血が流された。しかし、間もなくタリバン側がなぜか兵力を温存したまま退却し始め、

マジャリシャリフも、首都カヴールも次々と北部同盟の手に落ち、更に今月に入って

タリバンの本拠地のカンダハールも地元の反対勢力の手に落ち、タリバンはほぼ崩壊

した。バーバラさん達がいた村もタリバン兵は退却あるいは投降し、今では北部同盟の

兵士もいない。村にはバーバラさん達に続いて男達も戻ってきてこわれた家などの修復

に取り掛かっている。タリバンの最高指導者オマール師やテロの首謀者とされる

ウサマ・ヒン・ラディン氏の居所はつかめず、戦争は完全には終わっていないが今、

アフガニスタンではこれまで対立していた人々が集まり、今日発足した暫定行政機構を

中心に新しい国創りが始まろうとしている。これも「星力」のおかげにちがいない、と

わたしは信じている。

 わたしはアフガニスタンから戻ってから、アフガンのことについて色々調べてみた。

するとこれまで如何に自分がこの国について、そこで起こっていることについて

知らなかったかを思い知らされた。今思えば、何にも知らないで、よく行けたものだと

思う(だからこそ、行けたかも知れないのだが)。ここで、少しだけアフガンについて

紹介したいと思う。

 

ーアフガニスタン

 国土:面積65万平方キロ、日本の1.7倍の面積をもっている。

首都カヴールはほぼ大阪と同緯度にあり、高さは1800メートルである。国土

の大半が1000メートル以上の山岳国であり、夏は最高45度、冬はマイナス

20度以下になる。平均寿命は47歳で、パシュトゥン人38%、 タジク人25%、

 ウズベク人 6%、 ハザラ人19%、残りは多数の少数民族からなっている。

 国民の99%がイスラム教徒である。言葉はパシュトゥ語ー35%、アフガンペル

シャ語50%、トルコ語系言語11%、30の少数言語 4%となっており、15歳以上で

字が読める人の割合は男性が47% 、女性はわずか15%である。約70% の人が

農業および牧畜業を行っている。

 1919年に独立。73年7月共和制になった後、78年4月軍部の反乱により

人民民主党政権が出来た。79年12月ソ連の軍隊が攻めてきたことにより

カルマル政権が成立した。86年5月ナジブラという人が書記長に就任し、

89年2月にジュネーブ合意に基づき、ソ連軍の撤退が完了した。

しかしムジャヒディーン・ゲリラ勢力の攻撃により92年4月ナジブラ政権が

崩壊し、ムジャヒディーン政権が成立するが、各派間の主導権争いにより内戦が

続いた。そして94年頃から、イスラムへの回帰を訴えるタリバン(神学生という意味)

が勢力を伸ばし、96年9月にタリバンが首都カヴールを制圧した。ー

 

「今日出来たばかりの暫定行政機構にはマフード大佐やムシャラク少佐など、かつて

敵として戦っていた人達が閣僚として加わっているわ。前から恐れていたことだけど、

早くもそれを壊そうとする動きが出てきたのよ。暫定行政機構はマフード大佐を中心と

する北部同盟(17人の閣僚)と、カイザル議長を中心とするローマ・グループ(9人)、

残りのイランへの亡命者の「キプロス・グループ」及びパキスタン在住のパシュトゥン

人難民らの「ペシャワル・グループ」、それから特別に入閣した元タリバンのムシャラク

少佐の3つに大きく別かれるんだけれど、特に北部同盟とローマ・グループの対立が

深刻だわ。ローマ・グループに属するムハンマドさんの話では少し前までは結構いい

雰囲気だったそうだけれど、実際行政機構が出来てみたら急に険悪な雰囲気になって

しまってーこのままでは半年後の暫定政府発足が難しくなってしまうと思うの。だから

あなたに北部同盟の人達とローマ・グループの人達を仲直りさせて欲しいのよ。」

「で、でも、バーバラさん、わたしなんかがどうしてそんなことが出来るの?

とても無理だわ。グループのメンバーの名前もまだよく知らないしー」

「私はこの前来てくれた時、アフガンに雪を降らせてくれたあなたなら出来る、

と思うわ。それに、あなたは北部同盟のマフード大佐も、(ローマ・グループの)

ムハンマドさんも知っているわ。私は明日カヴールで2人にインタビューすることに

なっているの。あなたのことも話してあるわ。

だから是非あなたも一緒に来て欲しいのよ。」

わたしは少し考えてから

「わかったわ。わたし、行きます。」

と言った。

「じゃあ、私は今カヴール市内のホテルにいるから、明日9時までにここに来てね。

連絡先はこれよ。」

とバーバラさんは言ってホテルの場所と連絡先を教えてくれた。

 わたしは早速、景太郎パパと佐也加ママに事情を話した。さすがに2人は心配したが、

カヴール市内等アフガンのほとんどの地域で戦闘は行われていないこと、暫定行政機構

の教育相のムハンマドさんと知り合いであること等を話すと、納得してくれた。

「それではすみません。ススっと行ってきます。2、3日で戻れると思いますから

ー向こうに着いたら電話します。」

「本当に空港まで送らなくていいの。気をつけてね。無理しちゃだめよ」と佐也加ママ。

「ええ。一人で行けますから。」

「がんばるんだぞ。何かあったらすぐ連絡くれよな」と景太郎パパ

「はい。」

「ネネちゃんも一緒に行きたい。」「つよし君も一緒に行きたい」

「ごめんね。二人とも。すぐ戻るからね。このまえみたいノ星の子達が守ってくれる

から、だいじょうぶだよ。それじゃー」

と言ってわたしはみんなと別れてあの木の下に行き、ヌイびとを呼び出して新聞記者に

変身した。

「ラバボー。行くよ」

「はい、ひめさま」

そして木のロケットで再びアフガンを目指した。

 

 

→その1へ