コメットさん☆の日記「星の絆2」
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その1-

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 わたし達はその日、スピカおばさんの家に来ていた。
ラバボーはラバピョンの家に行っている。最近ラバボーがラバピョンの所に行く回数が
増えていることをわたしはちょっと気にしていた。
(いいな〜ラバボーはいつでもラバピョンに会えて。それに引きかえわたしは
 ーケースケ、いまごろどうしているだろう。あれから2ケ月近く経つのに、手紙の一つも
 来ないなんてー)
「コメット。どうしたの。浮かない顔をして。」
「いえ、おばさま。何でもありません。ちょっと考えごとをー」
「ケースケ君のことね。会いたいんでしょ?」とスピカおばさんはわたしの心を見たかの
 ようにズバリと言ってきた。
わたしは真っ赤になりながら、「ええ、まあ、その〜」というのがやっとだった。
「わかるわ。その気持ち。もうずっと連絡がないんでしょ?」
「ハイー。でも、わたしが助けが必要な時、ケースケの声が聞こえてくるんです。おかげで
 何度も助けられました。この前、メテオさんと入れ替わった時にもーあの声のおかげで、
 わたし、メテオさんと輝きを一つにするきっかけをつかんだんです。」
わたしはその時のことを詳しく話した。
「そう、そんなことがあったのー。ねえ、もしかしたら、ケースケ君はどこかであなたの様子
 を見守っているんじゃないかしら。前にあなたがケースケ君の心の日記を読んだようにー」
「星力がなくても、そんな事出来るんですか。それに、今はわたしの方からは出来ないしー」
「それはわからないわ。でも、2人の心の間に『絆』があれば、恋力で出来るかもしれないわ。
 ーあ、でもまだ彼から告白されてないんだっけ」
「ハ、はいーって、お、おばさま1どうしてそれを」わたしは動揺を隠せず思わずそう言って
 しまった。
「わかるワよ。でも大丈夫。彼の輝きを信じて待ちましょう。」
「はい、おばさま。」とわたしが言った時、突然
「た、たいへんですピョン!ラバボーがいなくなったですピョン!」と言ってラバピョンが
 かけ込んできた。
「ラバピョン、どうしたの?」とおばさんが言うと、
「2人で鬼ごっこをしているうちにいつの間にかラバボーがいなくなってしまったのピョン」
 わたしはすぐにラバボーが前回ここで捕まった事を思い出し、
「おばさま、大変。もしかしてラバボーはまた捕まっちゃったのかもしれないわ。わたし、
 ラバピョンと一緒にラバボーを捜しに行きます。」
「気をつけてね。コメット。」
「行こう。ラバピョン」とわたしが言った時、
「ひ〜め〜さ〜ま〜!」というラバボーの泣き声が聴こえてきた。
「ラバボー!どこにいるの!」とわたしは叫んだが、ラバボーの姿はどこにも見えない。わたしは
 ラバピョンに飛び乗って雲の上を目指した。
雲の上に出たわたし達は急いで星力を集め変身するとティンクルバトンでラバボーの居場所を聴いた。
バトンが指す方に目を向けると。、キラっと光るものが見えた。
「あれだわ。」
 ラバピョン、急いで!もしかしたら追いつけるかもしれないわ。」
「行きますピョン!」

わたし達は光に向って一直線に進んでいった。光はどんどん大きくなり、やがてわたしは
「やっぱり、あれは星のトレイン!いや、本当はタンバリン星国の気球かも知れないわ。ラバボー!」
と言った。
「ひめさま〜!、ボーはここにいるボー!これは本物の星のトレインで、今度は本当に星国に連れて
 行かれるんだボー!」との声が聞こえた。
「ラバボー!!」と、叫んだわたしが星のトレインを見ると、小さな白いものがちらっと見えた。
「ラバボー、今助けるわ。」と言ってわたしはバトンを振り、星力でラバボーをつりあげようとした。
が、あと少しの所で星のトレインはワープしてしまい、バトンから伸びた「星の絆」は何もない空間を
むなしく通り過ぎるだけだった。
「ラ〜バ〜ボー〜!!!」わたしはショックのあまり、そう絶叫した。

ー☆☆☆ー

 すっかり元気をなくしたわたしはいつの間にか地上に降りていた。
「コメットさま。元気出すのピョン。ラバボーはきっと私が助けるのピョン」
「ありがとう。ラバピョン。でもどうしたらー」その時、ティンクルホンが鳴った。
「はい、コメットです。あ、お母様!実はラバボーがまたさらわれちゃったんです。」
「そうなのよ。ラバボーは『姫様ほったらかし罪』で捕まってしまったのよ。この後臨時裁判が開かれる
 ことになっているの。わたしはこれからカスタネット星国で大事な会議があるから出席出来ないのだ
 けれど、あなたも証人として裁判に出て欲しいの。もうすぐ迎えの星のトレインがつくわ。」
「証人?」
「ラバボーについて色々聴かれると思うから、正直に答えて欲しいの。」
「そんなことより、早くラバボーに会わせて下さい。」
「残念だけど、それは出来ないわ。あなたはこの裁判の関係者。裁判が終わるまでは、たとい王女の
 あなたでも被告人のラバボーに自由に会うことは出来ない決まりなの。
 それにまだラバボーはこちらに到着していないわ。ラバボーの様子はあなたがこちらに着いてから
 知らせるようにするからー」
「でも、ラバボーは何にも悪い事をしていません。それはわたしが一番よく知っています。」
「わたしもそう思うわ。でもコメット。よく聴いて。だから、あなたが証人として呼ばれたのよ。
 ラバボーが悪い事をしていない事をみんなに納得させることが出来るのはあなたしかいないわ。
 あなたの答え次第でラバボーを助けることが出来ると思うの。わかる?」
「わかりました。お母様。やってみます。」
「裁判にはお父様は出席されるわ。何かあったらお父様に聴いてね。それではー」
と母は言って電話は切れた。
「ラバピョン、わたし、ラバボーを助けるために星国に行くの。もうすぐ星のトレインがくるから
 ラバピョンも来る?」
「もちろんですピョン。わたしもラバボーを助けるピョン」
「ありがとう。あ、おばさまに知らせなきゃ」それからわたしはスピカおばさんにこれまでのことを話した。
「そうー。それは大変ね。裁判はそんなに時間はかからないと思うけれど心配されるといけないから、一応
 あちらの家族にも話しておいた方がいいわ。」
「でも、どう言ったらいいのか、わからないわ。本当のことを言っても、信じてくれないと思うしー」
「それじゃ、こう言ったらどうかしらー」とおばさんが助け舟を出してくれた。
「わかりました。ちょっと、行ってきます。」
「気をつけて」
わたしは星のトンネルで沙也加ママのお店に行き、おばさまから言われた通りに沙也加ママに話した。
「そうー。友達の無実をはらしに裁判で証言しに行くんだーかっこイイ!ーなんて言ってる場合じゃない
 わね。一人で大丈夫?」
「父も一緒に裁判に出てくれることになっています。すぐに戻れると思いますけれど、後で連絡します。」
「おとうさんや子供達にはわたしから話しておくわ。気をつけてね。それから、ご両親によろしくね。」
「ハイー。」
「元気出して、いつものコメットさんらしくないわよ。」
「すみません。友達のことが心配でー。わたし、裁判なんかに出るのは初めてだし、みんなの前でちゃんと
 話せるかどうかー」
「だ〜いじょうぶよ。あなた、本当はハモニカ星国の王女様なんでしょ?」
「エ、?」わたしは驚いて言った。
「冗談よ。ネネちゃん達が言ってたのをまねしただけ。」
「ハ、ハ、ハ、そうですよね。ーママったら変なこと言うんですもの」とわたしはほっとして言った。
「頑張ってね。最後まであきらめちゃだめよ」
「それでは行ってきます」
「早く戻ってきてね。じゃまた」
わたしがおばさんの家に戻ると、丁度星のトレインが着いた所だった。
「おばさま。それでは行って来ます。」
「ご両親によろしくね。」
「はい。それじゃラバピョン、行くよ」
「それでは行ってきますピョン」
わたしは本当の姿に戻ると、ラバピョンと一緒に星のトレインに乗り込んだ。すぐに星のトレインは
走り出し、やがて雲の上に出た。
「さようなら〜」
次第に小さくなる地球に向ってわたしは手を振った。ー

ー☆☆☆ー

ー今は星のトレインはワープ中だった。わたしの住んでいたハモニカ星国のあるトライアングル星雲は
地球から約4000万光年も離れているが、星のトレインだとたった2時間くらいで着いてしまう。
星のトレインは一度に一億光年までワープすることが出来、2万光年までしかワープ出来ず、地球から
14万8千光年しか離れていないイスカンダルを往復するのに9ケ月もかかった宇宙戦艦ヤマトの性能を
はるかに上回っているのである(波動砲はついていないけれど)。
ヒゲノシタの話によれば、ハモニカ星国には恒星だけで約250〜500億個の星があり、大きな惑星
だけでもその4〜5倍、生まれたばかりの赤ちゃん星も含めると数えきれない程の星があるそうだ。
そしてカスタネット星国にはその2倍位、タンバリン星国には更にその2〜3倍の星があるという。
ー将来、こんなに大きな星国の王妃として、お母さんのように、みんなをまとめていくことが出来るの
だろうかーわたしは自分の存在のあまりの小ささに不安を覚えると同時に今それをしている母の苦労を
思った。ー
「コメットさま。何を考えているのピョン?」
「ラバピョン、わたし、お母さんみたいになれるのかなーって思ってたの」
「だいじょうぶですピョン!だってコメットさまはアフガニスタンに行った時みんなをまとめることが
 出来たのピョン!コメットさまはひとりではないピョン!みんなの力を合わせればきっと出来るピョン!」
「ラバピョンーありがとう。少し元気が出てきたわ。あ、車掌さん、星国まで、あとどれ位?」
「ひめさま。星のトレインは現在トライアングル星雲から約30トレイン分の所まで来ています。あと
 30分位で到着予定です。」
「ありがとう。」わたしはそう言うと、再び物思いにふけった
ーちなみに星国では地球のように「光年」という単位は通常使われず、ある距離を星のトレインが最大
スピードで進んだ時の時間を単位としている。例えば、地球までは約2時間かかるので2トレイン時間、
直径約5万光年のハモニカ星国の大きさは10トレイン秒、などとなるー
「ひめさま、後5分でワープアウトです。もうすぐ着きますよ。」
「車掌さん、わかったわ」

ー5分後ーついに目の前に、なつかしい、トライアングル星雲を構成する3つの星国の渦巻きが広がった。

「ラバボー。必ず助けるからね。」

だんだん大きくなる渦巻きを見ながらわたしはそうつぶやいたー

→その2へ続く