コメットさん☆
第44話(嘘) 「輝き まだまだいっぱいだYO!!」


脚本:上橋
絵:長良川鵜




モナコ公国。
フランスとイタリアの国境に存在する長さ3km、幅200〜300m、人口にいたってはわずか三万人ばかりの美しき小国。

亜光速による移動のため、最終回より半年の歳月が経ち、現在はちょうど夏である。コメットさんとミラたんはここに降り立ち、そして、商業地区にあるしがないソバ屋の住みこみ店員として、ケースケが帰るまで働くことにしていた。
ちなみにソバ屋になったのは、「食べ物関係がいいです」というミラたんの強い希望による。

ランチタイムの戦争のような忙しさが終わると、だいぶヒマになり、お昼休みに入る。そうすると、ミラたんは街へフラフラと消えて行き、コメットさんは一直線にケースケの元に向かう。

商業地区のビル街の大通り。コメットさんは、交差点で信号待ちをしていた。
コメット「今日こそ、ケースケにアレを聞いてみよう…」
そう思っていると…
男「おじょうさん」
何者かが声をかけてきた。振り向くと、コメットさんの父似の初老の紳士が、リムジンからこちらを見ていた。
男「お嬢さん、この辺にうどんの美味い店はないかい? 力うどんにおモチが3つ入ってるところとか」
コメットさんが振り向くと、コメットさんの父似の初老の紳士こちらをのぞいていた。
コメット「お、おとうさま? また地球に…?」
男「なんのことだ? お嬢さんがワシの娘?」
コメット「あっ、違った…」
軽く笑った後、紳士が言う。
男「君みたいなかわいいお嬢さんの親に似てるってのは、なんか嬉しいねえ。で、ソバ屋は?」
コメット「あっ、それなら、あそこのソバ屋はどうですか? 私、お手伝いしてるんです」
男「それじゃ、そこにしよか。車出してくれ… それじゃあお嬢さん、ホッホッホッ…」
紳士の車は、颯爽と去っていった。
ボー「似てる人もいるもんだボ」
コメット「うん、ちょっとビックリかな」

ケースケの寝泊りしている船の中、ケースケの個室。
コメット「ケースケ、いつごろ帰るの?」
ケースケ「1週間後に船の業務が終わるから、その時帰る。前もいったろ」
コメットさんはじれったそうに言う。
コメット「それってオーストラリアにでしょ? 日本には帰らないの? 皆心配してるよ」
ケースケは、いつものちょっとムッとしたような感じで切り返す。
ケースケ「お前こそ帰らねえのか? チビたち心配してるだろ。この前だって電話の時すげえ騒いでたじゃねえか。『星力で早く帰ってきて』ってよ」
コメット「… 私は……」
黙りこむコメットさん。少し間が空いた後、ケースケが答える。
ケースケ「まあ、もうすぐ帰るよ。働いて旅費もたまったし、オーストラリアに着いたら、あちこちに挨拶をして、その後船でな」
コメット「それって、どのくらいかかるの?」
ケースケ「ま〜、半年くらい見ておけば大丈夫だろ」
コメット「そんなに…」
ケースケ「しかたないだろ。焦ったって」
コメットさんはうつむき、思わずつぶやく。
コメット「星力が使えればいいのに…」
ケースケ「星力ぁ?」
コメット「ううん…なんでもない…」

コメットさんは、例のソバ屋のある通りをトボトボと歩いていた。
ラバボー「言ってることは正しいボ。半年待つしかないボ」
コメット「そうなんだけど… 早く皆にあいたいな…」
ラバボー「ボーもラバピョンに逢いたいボー… ああ、プルプルご飯も食べたいボ〜…」
二人でガックリとうなだれる。
そのまま道を歩いていると、ラバボーがなにかに気づいた。
ラバボー「?」
見ると、料理屋の店先にポスターが張ってある。
ラバボー「あ、ミ、ミラさんだボ!!」
ポスターには、ミラたんの顔写真がどアップで写されている。
コメット「ミラさん…?」
ミラたんの顔には、赤色で大きな×印がつけられ、その下にフランス語で何か書いてあった。
コメット「なんて書いてあるのかな? 文字が読めない…」
ラバボー「ボーにもわからないボ…」
コメット「う〜ん…」
しばらく考えて、ラバボーが結論を出す。
ラバボー「…料理屋でこのポスターってことは、きっと、たくさん食べたらタダってやつで食べすぎて、ブラックリストに載ったってことじゃないかボ?」
コメットさんは絶句した。
コメット「…そ、そうかも」
ラバボーが続ける。
ラバボー「きっとそうだボ、それしか考えられないボ!」
コメット「それじゃあ、ミラさん、いつもお昼休みに食べ歩きしてたんだ…」
二人してあっけにとられる。
ラバボー「さっすがミラさんだボ…」

店員業に復帰しようとソバ屋に戻るコメットさん。
ドアを開けると、店長がどこかに電話をしていつ姿がみえた。
店長「そうです、はい、お願いします」
コメット「?」
店長のそばに近づくコメットさん。
店長「はい。それでは失礼します」
店長はそう言って電話を切り、不意に背後の気配に気づいた。振り向くと、コメットさんが不思議そうな顔をして立っている。
店長「あ、コ、コ、コメットさんお帰り! それじゃ、早速仕事をお願いね」
コメット「あ、はい(?)」
まあ、どこだっていいかと、いつもの気楽さで業務に戻ろうとするコメットさん。
その時、ミラたんが、なにか幸せそうな顔をしながらドアを開け、帰ってきた。
ミラ「ただいま戻りました」
店長「あ、それじゃあミラちゃんも仕事頼むよ」
ミラ「はい、かしこまりました」
ラバボーが、店長に感づかれないように話しかける。
ラバボー「ミラさんのあの満足そうな顔! 絶対食べてきてるボ」
コメット「う〜ん…」

その日は何事もなく終わり、翌日。再びお昼休みタイム。
ミラ「それじゃあ、ちょっと出かけてきます」
店長「いってらっしゃい」
軽い足取りで出かけていくミラたんを見送りながら、コメットさんがつぶやく。
コメット「やっぱり、食べ歩きなのかな…」
ワクワクと妄想を膨らましていると、不意に店長から声がかかった。
店長「コメットさん…」
コメットさんも切り返す。
コメット「なんですか?」
店長は、ニヤリと笑いながら言う。
店長「コメットさん、君にいいものをあげよう」
コメット「え?」
予想外の展開にきょとんとするコメットさんに、店長はニヤニヤしながら近づく。
店長「がんばったから、ワシからごほうび。ホラ、これ!」
差し出された店長の手には、何かのチケットが3枚握られていた。
コメット「え〜と、文字が読めないけど… でも、これって…」
店長「日本行きの航空券」
驚いた表情を浮かべるコメットさん。
店長「遠慮なくもらってくれよ! 君のおかげだしな」
コメット「私の…?」
不思議そうな顔をするコメットさんに、店長が解説する。
店長「昨日、君に聞いてきたらしいんだが、すごい金持ちの人が来てな。ウチが気に入ったって、すごい代金を払っていったんだよ」
コメット「あ、ひょっとしてあのお父様みたいな人…」
店長「コメットさんのお父さんはあんな感じなのか? まあそれより、これで君とミラさんと、お友達のケースケ君と、三人で帰れるじゃないか! 日本に! …遠慮することはないよ。お行きなさい。気が向いたときにまた来てくれればいい」
コメット「…あ、ありがとうございます! さっそくケースケに知らせなきゃ!!」
そう言うと、コメットさんはドアを勢い良く開け、船着場へと走った。

再びケースケの船室。
日々の重労働で疲れた体をベッドで休めるケースケの元に、コメットさんがドアを開け、息を切らせて走りながら入ってきた。
コメット「ケースケ! ケースケ! 日本に帰れるよ!!」
ケースケ「はぁ? なに言ってんだバカ」
コメット「あっ、また… それより、かくかくしかじかで… 来週の水曜なんだけど…」
ケースケ「マジか!? わかった、船長に話してみる… うわッ!!」
ドサッという音をたてて、イスから転げ落ちるケースケ。それを見て微笑むコメットさん。
コメット「あはっ! あわてビトさん! そうだ、つよしくんたちにも教えなきゃ!」
トゥインクルホンを取りだし、藤吉家に電話をかける。
数回のコールの後、懐かしい声が出た。
沙也加ママ「はい、藤吉です」
コメット「あ、沙也加ママ!」
沙也加ママ沈黙。どうやら驚いているようだ。
沙也加ママ「え!? コメットさん!?」
コメットさんは懐かしい声を聞けたことで、自然と笑顔になる。そして、嬉しそうに続ける。
コメット「えっと… もうすぐそちらに帰ります! 来週の水曜日、飛行機で」
沙也加ママ「え!? 本当!? キャーパパー!!」
電話の向こうから、景太朗パパの「落ちつけ」という声が聞こえる。懐かしい声が聞けた安心感で、思わずコメットさんの目が潤む。
その時不意に、受話器が何者かに取られた。たがて聞こえてきたかわいらしい声は、やはり涙が出るほど懐かしい声であった。
つよし「コメットさん!! コメットさん帰ってくるの!?」
コメット「つよしくん!!」
つよしくんは強い調子で言う。
つよし「絶対だよ!! 絶対帰ってきてね!! すぐにだよ!! お、おしっこ行かなきゃ!!」
ゴトッという音とともに、受話器がどこかに乱暴におかれた。
コメット「あは! トイレに行く途中だったんだ」
つよしくんにおかれた受話器が、また何者かに取られる。
沙也加ママ「というわけで、早く帰ってきてね! ケースケにもよろしく言ってね」
コメット「はい!」
沙也加ママ「ところで、今こっち夜の11時なんだけど… 時差で…」
コメット「ご、ごめんなさーい!」

店に戻るいつもの通りも、その日はいつもより輝いて見えた。
ラバボー「やったボ!!」
コメット「うん、ケースケも帰ってくれるしね! あとはミラさんかな」
ラバボー「ミラさんも行くにきまってるボ! …ってあれ? うちの前に人だかりが…?」
コメット「すいません、どうしたんですか!?」
ラバボー「あ、真ん中にいるのミラさんだボ!!」
見ると、人だかりに向かって、店長とミラたんが軽く謝っている。
コメット「どうしたんです!?」
店長「いや、この子が食べ放題のところで食べすぎるんで、店が潰れるから止めさせてくれってね…」
ミラたんはすっかり憔悴し、半泣きでいる。
店長「この子も反省してるようですし、よく言い聞かせときますから…」
群集A「たのみますよホント、この子が来るようになったとたんにウチ赤字になったんですから…」
ラバボー(スゴいボ…)
群集B「はっきり言って業務妨害だよ」
店長「でも、食べ放題で食べただけなんだから、この子はなんも間違っちゃいないよ」
群集C「ケタ違いなんだよ!! あんたんとこの妨害工作かと思ったぞ。1回で4000フラン(約8万円)も食べられちゃ、潰れるよ!」
店長「そ、そうか。それじゃあ気持ちもわからんでもないが、だからと言って、こんな小さな女の子をよってたかって怒るのは、ちょっとやりすぎじゃねえのか?」
ミラたんは、涙目になりながら小さくなっている。その様子を、眉をひそめて見守るコメットさん。
コメット「ミラさん、かわいそう… ちょっとひどいよね、しょうがないけど…」
ラバボー「確かにしょうがないけど、ボーもそう思うボ… あ、いいこと思いついたボ!」
コメット「なに?」
ラバボー「大食い大会とかやって、ミラさんに勝たせれば、ミラさんもすっきりするんじゃないかボ?」
コメット「あは、面白そう! 言ってみよ!」
コメットは、人だかりに近寄ると言った。
コメット「大食い大会をやったらどうですか?」
群集D「なんで大食い? やる必要なんかどこにもないだろ」
コメット「そ…それは…」
店長「いや、いいよそれ。それで恨みっこナシにしないか? 賞金出すようにしてよ。大食いの恨みは大食いで晴らすってのが粋だろ」
群集E「面白そうだな」
群集F「オレ乗ったよ。それで損をチャラにしてやるさ」
群集G「ちょっと待て、彼女に勝てる奴がいるのか!? やる必要もないことだ」
もめだす群集。
群集H「我々も、ちーと大人気なかったし、お遊びでいいじゃんか」
群集I「しかし…」
そして、しばらくもめたが、やがて結論を出した。
群集「やってやろう。会場にするところの定休日にでもな」
店長がにやりと笑って言う。
店長「会場はウチでいいだろ。ちょうど『わんこそば』もあるしよ」
群集「よし、わかった。ただな…」
うってかわって急に弱気な声になって、群衆が言う。
群集「我々は3人がかりでいいか? そのくらいでないと勝負にならないんだ…」
店長「女の子相手に三人かよ… どうだい? ミラちゃん」
ミラたんが即答する。
ミラ「は、はい… それなら…」
日頃の気弱さからは到底想像できない強気過ぎる返事に、店長は驚く。
店長「そ、それならって… ホントに大丈夫なのか!? まあ、やってやろうじゃねえか! ミラちゃん、絶対勝てよ!」
小娘にずいぶん舐められたもんだと苦虫を噛み潰したような顔をする者、祭りに思わずにやける者。群集の反応も様々である。
群集「じゃあ、まあ今と同じ時間でよいな。ヒマだしよ。よし、首を洗ってまっていろ」
そう言って、群集はスゴスゴと引き上げて行く。店長が吐き捨てる。
店長「古ぃセリフ吐きやがってよ…」
コメット「……」
コメットさんが心配そうに、店長に話しかけた。
コメット「店長さん、定休日って…水曜日じゃ? それって飛行機の…」
店長「うっ… ま、まあ、さっさと勝っちまえば問題ない」
コメットさんは、心配そうな顔をしながらうつむく。
コメット(大丈夫かな……)

その当日、"来週の水曜日"の朝9時、珍しくケースケの方から迎に来た。玄関でコメットさんが出迎える。
コメット「ケースケ? 飛行機3時からじゃなかったっけ?」
ケースケ「そうだけど、こういうのは早いほうがいいんだよ。迷ったりゴタゴタがあるし、空港だって行ったことないし、しかも空港フランスだしな」
コメット「でも、ちょっと今日は無理かも…」
ケースケ「はぁ!?」
コメット「二時から大食い大会にミラさんが出るから…」
ケースケ「なんだよそれ!」
カリカリ坊やと化すケースケに、コメットさんは強い調子でお願いする。
コメット「ごめん、先行ってて! …もし間に合わなかったら、先に飛行機でいっちゃっていいから」
ケースケ「バカ! なに言ってるんだ! …空港で待ってるからな!!」
ケースケは厳しい調子でそう言うと、バスのある通りへと歩いて行った。
コメット「怒られちゃった…」
ラバボー「でも、怒るのも無理ないボ」
コメット「うん、そうだね…」

午後2時、ソバ屋に先日の群集が集まってきた。
古い木製のテーブルにつき、緊張するミラたん。
コメット「がんばって! ミラさん!」
そう言うコメットさんは、店長の家族とともにわんこそばの補給係になっている。
しばし後、人相のあまり良くない連中がドヤドヤと入って来た。
群集「約束通り来たぜ。時間が惜しいから、さっさとはじめようか」
そう言うと、群衆の中から大男が三人、ミラたんと同じテーブルについた。
大男A「店長さん、こんな女の子が相手なんですか?」
大男B「レスラーみたいな女かと思ってましたら、えらくぷりちーじゃないですかぁ?」
大男C「鼻から食っても勝っちゃうぜ」
ミラたんは、ちょっと悔しそうにうつむく。
今にも罵声を浴びせそうな大男達に、同店のコックが釘をさした。
群集「静かに、はじまるるぞ。…あと、彼女はなめない方がいい…」
大男A「ヘっ、そうですかい…」
おわんを持ち、コメットさんが開始の合図をする。
コメット「それじゃあ、はじめます。ヨーイ… スタート!!」
補給係がソバを椀に入れ始めた。ミラたんも大男も、当然難なく食べだしている。
大男B「こりゃいいソバだね。蕎麦粉が上等さ」
ミラ「おいしい…」
大男C「お、まだ余裕だね。おじさん本気出しちゃうよガハハ」

余裕しゃくしゃくの大男軍団だったが、さすがに3ケタの大台に乗ると、かなり顔色が変わってきた。
大男A「ぐえ… …まだまだァー!!」
大男B「あの子… まだ降参せんのか? だがそろそろ… ゲッ!?」
ミラたんの方を見ると、顔色一つ変えずにもぐもぐと食べる彼女の姿があった。
大男C「なるほど……強い!!」
お椀が目の前に次々と重ねられて行き、それは見たこともないような高さへと成長して行った。

やがて、顔がカエルのような色に変色した大男の一人が、とうとう椀にフタをした。
大男B「も… もうダメっス……」
記録は133杯であった。
いつのまにか集まった野次馬も騒ぎ出す。
野次馬「いいぞ女の子!! やれやれ!!」

やがて、また大男軍団が一人降参した。記録は157杯。

そして、ミラたんと大男Aの正面対決になったが、もう勝敗は見えていた。
大男Aの腕は震えだし、限界が近いことを白状していた。一方ミラたんの動きには一切よどみがない。
野次馬「すげぇ… この勝負見えたな…」
そして、大男Aも降参、記録は210杯であった。

残るはミラたんのみ。あとは食って食って食いまくって、三人の合計500杯を超えればその時点で勝利となる。250杯まで食べた時点で、コメットさんが声をかけた。
コメット「ミラさんすごい! もうみんなの半分食べちゃった!」
ミラ「…もう、半分なんですか?」
その発言を聞いた時、その場にいた全ての人間が結末を悟った。

そしてミラたんは500杯を完食。大男たちに完勝した。
さすがに意気消沈する大男組に対し、コメット組と野次馬は大興奮であった。
店長「すげえ!! ミラちゃん、あんたすげえよ!!」
ミラ「えへへ…」
コメット「ほんと… あっ!!」
決闘の興奮にのまれて完全に忘れていた大切なことを思い出し、愕然としながら大きな声を上げる。
コメット「そうだ!! 飛行機!!」
ミラ「あーっ!!」
店長は時計を見た。
店長「やば… もう3時だ!!」
コメット「急がなきゃ!! そ、それじゃ、お世話になりました!!」
ミラ「あわわ… あわただしくてすみませーん!!」
店長「が、がんばれよ〜」
二人は、足をもつれさせるような勢いで、自室へと戻って行った。

今まで暮らしていた小さな洋室の二人部屋。内装はもちろん星国チック。
本来なら内装を直して、飛ぶ鳥あとを濁さずと言いたいとこだが、今は内装がどうとか言っている時間すらない。
コメット「ミラさん、荷物はもった!?」
ミラ「あ、はい!」
コメットさんは、バトンを空中より出した。
ラバボー「急ぐボ姫さま!! もう3時5分だボ!!」
コメットさんは、バトンを天にかざし、言った。
コメット「幾千億の星の子達、私に力を下さい… みんなが持っている力を… 一つの輝きにして…」
そして、星力がたまったところで、例の呪文を唱える。
コメット「エトワール☆」
呪文により、虚空に星のトンネルが開く。
コメット「行きましょ!」
ミラ「はい!」
ラバボー「急ぐボー!!」
一行は星のトンネルに入り、飛行場へと一直線に向かった。
ラバボー「姫さま!! もう飛行機出ちゃってるかも知れないボ!!」
しばらく考え、コメットさんが言う。
コメット「飛行機でちゃっても、星のトレインあるから大丈夫だけどね…」
ミラ「あっ!!」
ミラたんが、何かを見つけた。
コメット「ミラさん。どうしたの?」
下を見ならら言うミラ。
ミラ「…あれ、ケースケさまでは!?」
みると、確かにロビーにケースケの姿が見える。
コメット「行かなかったの…?」

二人は、すぐにケースケの元へと降り立った。
コメット「ケースケ!」
突然現れたコメットさんたちに、ケースケが驚く。
ケースケ「うわっ!! お、おせえ上に、いきなり現れるなバカ!!」
ケースケの顔を不安げな表情で見上げながら、コメットさんが言う。
コメット「ケースケ… 待っててくれたんだ…」
ケースケは、正論を怒鳴り返す。
ケースケ「ほっといていけるわけねえだろ!!」
怒鳴られたので涙目になりながら、おずおずと声をかけるミラたん。
ミラ「お…遅れて申し訳ありません…」
しかし、そんなのは意にかえさず、一目散に走り出すケースケ。
ケースケ「後だ後!! とにかく飛行機だ!! 走れ!!」
二人も続く。

そして飛行機は、30分遅れたものの無事出発することになった。
シートベルトを締めるようにとのアナウンスが流れ、飛行機は使用する滑走路へと向かった。
ミラ「なんとか…ハァ…ハァ…間に合いましたね…」
ケースケ「全然間に合ってねえよ!! なにやってたんだよお前ら!!」
ヘコむコメットさん。
コメット「ごめん… もう行ってると思って…」
容赦のないケースケは続ける。
ケースケ「行くわけねえだろ!!」
その様子を見ていたミラたんが、あわててコメットさんの弁護に入る。
ミラ「わ…私が悪いんです… 私のために、コメットさまは残って下さったんです……」
ケースケ「……」
相手がミラたんだといまいち怒りにくいので、ケースケは黙りこむ。コメットさんも、ミラたんも黙る。

その気まずい雰囲気の中、飛行機は滑走路へと到着した。
そして、姿が見えなくとも音だけ聞いてブルドーザーだと認識できるように、とてつもないパワーを確信させるエンジン音が機内に響く。
ミラ「きゃあっ!!」
ケースケ「うおっ…」
コメット「す、すごい力…」
そして、そのまま凄まじいGを発生させながら加速し、離陸した。
不意に、地面を走っている感覚が途絶えた。
ミラ「飛んだ…!?」
思わず、窓の方を見るコメットさん。
窓からは、街がどんどん小さくなっていく様子が見える。
コメット「飛んだ… 星のトレインみたい…」
窓の方に、思いっきり見を乗り出すコメットさん。すると、上のほうから声がした。
ケースケ「な、なにやってんだ!」
コメット「え? あ!!」
すっかりケースケの方に体をもたげてしまっている自分に、はじめて気づいくコメットさん。ケースケも真っ赤な顔をして、コメットさんの方を見ている。
あわてて自分の席に戻るコメットさん。ケースケはケースケで、意味もなく座席に備え付けのパンフレットを見たりしはじめる。その、すっかりおとなしくなったケースケと、恥ずかしそうにうつむくコメットさんを見て、安心したようにミラたんが微笑んだ。



成田新東京国際空港に、また一機、飛行機が降り立つ。点のような光が徐々に大きくなり、滑走路に舞い降りた。
その様子を、空港特有の超巨大な窓から見る、キラキラと輝く目をした少年が言う。
つよし「あの飛行機に、コメットさんのってるかなぁ…」
いっしょにいる双子の女の子が続ける。
ネネ「乗ってるかなぁ… 遅いなぁ…」
後ろでは、優しい父母がそのようすを見守っていた。
沙也加ママ「もうすぐよ。きっと」
景太朗パパ「なんか、飛行機の出発がかなり遅れたらしい。でもまあ、そろそろ来るだろ」
その時。沙也加ママが何かに気づいた。
沙也加ママ「あっ、ホラ! あそこ!!」
沙也加ママが指差す先には、こちらに手を振るピンク髪のやさしい顔をした少女と、ちょっとムスッとした少年、あと金髪の内気そうな少女が歩いている。
懐かしい、大好きな姿を見た少女がさけんだ。
ネネ「あ!! コメットさんだ!! 帰ってきた!! コメットさーん!!」
コメット「はーい!!」
コメットさんも、いつものかわいらしい声で答えた。藤吉一家に満面の笑みがこぼれる。
やったといいながら、幼い少年がガッツポーズをとった。
つよし「はーいって言った!! コメットさーーん!! コメットさーーーん!!」
そのコメットさんが、手を振りながら笑顔で答える。
コメット「はーい!! はーーい!!!」
横から、顔を赤くしたケースケがつっこむ。
ケースケ「恥ずかしいから止めろよ…バカ」
コメット「あはっ!」
つよネネコンビが、三人の元へと走り出した。
つよし「コメットさーん!! つよしくん逢いたかった!!」
ネネ「ネネちゃんはもーっと逢いたかった!!!」
コメット「コメットさんも逢いたかった!! あはっ… 涙出てきちゃった…」
そして、涙をふき、大きく手を振った。
もちろん、いつもの笑顔で…









あとがき(脚本担当上橋):
いや、実はおけやさんの脚本の再現などを志してみたのですが、ちょいと無謀すぎました(爆) メテオさん出てこないですし(詳細がわからなかったのであった)
メテオ「許さないったら許さないわ!! シュテルン!!」
上橋「お…お許しを… ぎゃばらばーッ(爆死)!!」

しかし、偉大なる絵師、長良川鵜様の破壊力によって無理矢理感動巨編になったので、これはこれでよし!!