コメットさん☆の日記「心の闇」


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わたしがテレビを見ていると、そこにやせおとろえ、おびえきった目をした子供やみ
すぼらしい服をまとい疲れきった表情で子供を抱く母親や、死んでしまった家畜の前
にぼうぜんとする人等が写し出された。「かわいそうーあの人達はどうしてあんなに
悲しそうな顔をしているの。」
「あの国の人達はききんで、食べ物がとれなかったり、家畜が死んだりして毎日おな
か一杯食べることが出来ないんだ。」とネネちゃんパパが答える。
「その国はどこ?」
「アフリカといってここから遠い所にあるんだ」
「そうー、わたしちょっと行って来ます」
「え、行くってコメットさん!?ー」
わたしは星のトレインでアフリカへ向った。
 わたしがそこで見たものはー病気、貧困、破壊された自然、争い、家や仕事もなく、
さまよう人々ーこんな事は星国では見たことがなかった。ーわたしは強いショックを
受けた。しかし自分が何も出来なかったことにもっとショックを受けた。助けるべき
人の数があまりにも多く、星力を使ってもほんの一握りの人をしかも一時的に助ける
ことが出来るにすぎなかった。 「私はハモニカ星国の王女なのにーどうすることも
出来ないなんてー」
 わたしは打ちのめされて戻ってくると、スピカおばさんの前で泣き崩れてしまった。
「おばさまー。。」それだけ言うのが精一杯だった。
スピカおばさんは全てを知っているかのように、だまってわたしを抱きしめてくれて
いた。ー
わたしが見て来たことを話すと、スピカおばさんは
「そう、それは大変だったわね。あなたが見たものは人の中の『心の闇』によって作
り出されたものではないかと思うの」
「心の闇ー」
「そう、わたしやあなたの中にも『心の闇』はあるのよ。だって『輝き』の裏側なん
ですもの」
「わたしにも『心の闇』があるー」
「そう、わたしは、地球に長いこといて、やっと気付いてきたんだけれど、地球では
つらいこと、悲しいこと、悪いことを星国にいる時より多く経験したわ。そのせいだ
と思うけれど、地球の人は星国の人より
『心の闇』に気付きやすいみたいなの、その反対に、星国の人は地球の人より、『輝
き』に気が付きやすいみたいだけど。」
「『心の闇』は星国の人には見えにくいー」
「コメット。あなたはハモニカ星国の王女よ。食べ物や住む所に不自由することもな
いし、ステキなお父様、お母さまがいるし、星国の中では今は平和が保たれているわ。
それはとてもいいことよ。でも、『輝き』だけに目を向けていてはいけないの。光り
があるとその回りにカゲが出来るように『輝き』とは表裏一体の『心の闇』にも気付
く必要もあるの。自分の『心の闇』に気付くこともとても大切なことだからー」
「おばさま。それって『心の闇』も自分にとって必要だってことなんですか」
「難しい質問ね。少なくとも『心の闇』を消すことは出来ないわ。だからそれをその
まま認めていくしかないんじゃないかしら」
ーとその時、「コメット。これをあんたに届けるように言われたわ。わたし、もうあ
んな所2度と行きたくない!」
「ありがとう。メテオさん。手紙?誰からだろう。」
「コメット。これ、アフリカからよ」
「え?。」急いで中を開けて、読んでみる。思わず涙が出てきた。
それにはこう書いてあった。
「しんあいなるコメットさま。あなたは本当に星の国から来られたのですね。メテオ
さまから聴きました。
あなたのおかげでぼくは病気が治り、元気になることが出来ました。あなたは天使の
ようなひとですね。
こんなぼくといっしょにいてくれるんだもの!たくさんの輝きをありがとう。今度は
ぼくがみんなに輝きをわけてあげたいと思います。また来てください。ジョンより。」
「コメット。あなたは『あなたにしか出来ないこと』をしたのよー」
 わたしは、やっと思い出した。あそこで「キラキラ光る瞳、満天の星、豊かな自然、
ゆったりした時の流れ、困難の中で助け合う人々」も見たことを。私はほとんど何も
出来なかったけれど、アフリカの人達の中にも「輝き」を見つけることは出来た。そ
して、アフリカの人が大好きになった。いつか、また行ってみたいー今度はもう少し
「輝き」を分けてあげられたらーー。